2015年10月11日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (288) 「オンネシルクタウシナイ川・キトタウシナイ川・サラキシエナイ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

オンネシルクタウシナイ川

北見市端野町忠志で常呂川に合流する、支流の名前です。では早速ですが永田地名解を見てみましょうか。

Shuruk ta ush nai  シユルㇰ タ ウㇱュ ナイ  附子ヲ掘リ採ル澤
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.470 より引用)

ということで、onne-surku-ta-us-nay で「長じた・トリカブト・採る・いつもする・沢」かと思ったのですが、東西蝦夷山川地理取調図や戊午日誌には「シユンクウシナイ」と記されていました。これだとちょっと話が変わってきますね。

「シユンクウシナイ」(あるいは「シユンクタウシナイ」)であれば、sunku(-ta)-us-nay で「エゾマツ(・切る)・いつもする・沢」であると考えられますね。sunkusurku では、地名に出てくるのは surku(トリカブト)のほうが多そうな印象がありますが、sunku-ni-tay(春国岱)という例もあるので sunku も頻出……とは言わないにしても、そこそこ使われる単語としてマークすべきなのかな、と思います。

残念なことに、surku は知里さんの「──小辞典」に記載があるのですが、sunku のほうは記載がありません。紛らわしい単語なので、記載があれば良かったのですが……。

キトタウシナイ川

常呂川の支流に「仁頃川」という川があるのですが、その仁頃川の支流の名前です。またしても「タウシナイ」系の川名ですが、この辺りは植生を川名に組み入れるケースが多かったのでしょうか。トペンピラウシナイもキナチャウシナイも、そして忠志もオンネシルクタウシナイもそうでしたよね。

地名(川名)に出てくる植物は、基本的に何らかの役に立つものばかりなのですが、「キトタウシナイ川」の「キト」は、ご存知「行者にんにく」のことですね。ということで kito-ta-us-nay で「行者にんにく・採る・いつもする・沢」だ、ということになります。

サラキシエナイ川

北見市南部、道道 27 号線沿いを南から北に流れて常呂川に注ぐ支流の名前です。川沿いに「北見市開成」という集落がありますが、以前は「サラキチシュナイ」(更吉朱内)という名前だったのだそうです。

東西蝦夷山川地理取調図には「シヤリキシナイ」とあるので、「シヤリキシナイ」が「サラキシエナイ」に変化したのかと思いきや、永田地名解に次のような記載がありました。

Saraki chish nai  サラキ チシュ ナイ  茅聲川
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.470 より引用)

永田地名解、たまに良くわからない解を出してくるのが油断のならないところですが、これは sarki-chis-nay で「葦・泣く・沢」と解釈したのでしょうか。chis には「岩」や「中くぼみ」といった意味もあるので、何ゆえに「声」という風に解釈したのかが謎ですね。

NHK北海道本部編の「北海道地名誌」には、「葦原の頭にある川の意」とありました。うーん、sar-kes-us-nay で「葦原・はずれ・ついている・沢」といったところでしょうか。仮にそうなのだとしたら、永田地名解はかなり外した内容だったことになりますね。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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