2012年10月21日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (82) 「厚床・槍昔・東梅」

 

風蓮湖沿いの地名はどれも難解なものばかりですが、今日もがんばって行きましょう!

厚床(あっとこ)

at-tok-to?
(おひょう)楡・突起する・沼
(? = 典拠あり、類型未確認)
根室本線の駅(厚床駅)があります。そして、厚床から西に 5 駅ほど行くと「厚岸駅」があります。紛らわしいことこの上ないです……。

とりあえず、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

 厚床市街や根室本線厚床駅は,根室市の西端別当賀川のすぐ北の処にあるが,これは広い厚床地域の西の端の処なのであった。現在の 5 万分図では,厚床駅の東々北 4 キロ半くらいの処にアットコトウと書いてあり,20 万分図では厚床沼とある辺が元来の場所か。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.239-240 より引用)
んー、「ウォッちず」で必死に探してみたんですが、アットコトウ(厚床沼)は見つからず……。風蓮湖に注ぎ込む「アッツコベツ川」は見つかったのですが。

続きを見てみましょう。

 道庁河川課編の河川 5 万分図で見ると,そのアツトコトウの字の辺から北流して風蓮湖に注ぐ川が厚床沼川で,松浦図はその川口の処にアトコトと書いている。風蓮川口から,その東の半島を回った南の処の入江の奥で,初航蝦夷日誌もアトコトを記している。その東側に別の厚床川(現称)があるが,それは松浦図のホン・アトコト(小・厚床川)に当たるらしい。要するに厚床沼川が厚床の名の発生地だったように思われる。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.240 より引用)
ふむふむ。アッツコベツ川はこの川の名前みたいなのですが、山田さんの言う「厚床沼川」と同一の河川か、かなり近い河川であることは間違いなさそうですね。


さらに続きを見てみましょうか。

 永田地名解はそれについて「アッ・トコ・トーペッ。楡樹生出する処」と少し分かりにくい訳をつけたが,現代流に書けば,アッ・トコ・ト(トー)「at-tok-to おひょう楡が・伸びている(突起している)・沼」とでも解すべきか。それが松浦氏の時代にはアトコトと書かれ,今は厚床となった。今の 5 万分図のアットコトウは,殆ど原音の形で残ったものなのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.240 より引用)
なるほど……。at-tok-to で「(おひょう)楡・突起する・沼」と考えていいのでしょうかね。usi(群在する)ではなくて tok(突起する)という表現なのが少々引っかかるのですが、きっと tok と呼ぶに相応しいところだったのでしょう。

ただ、ちょっと tok に引っかかったので、あえて別解も考えてみました。at-tokot で「もう一つの・沼の跡」となるのですが、誰もこのような解釈をしていないということは……やっぱ無理があるんですかね。

槍昔(やりむかし)

「槍昔」については、北海道のアイヌ語地名 (1013) 「厚別・槍昔・ソウサンベツ川」を参照ください。

厚床の北で走古丹の南、奥行臼の東に位置する風蓮湖沿いの地名です。……今の今まで、こんな地名があったとは気づかなかったのですが。

さて、この「槍昔」、あまりにマイナーな場所だからか、頼みの山田秀三さんにも華麗にスルーされてしまっていますし、「角川──」に至っては「地名の由来」が完全にスキップされてしまっています。というわけでネタ元がありません。

少し考えてみたのですが、yar-muk-usi で「破れる・塞がる・よくする所」とは考えられないでしょうか。

一応「ヤリムカシ川」という川があるのですが、ただ、ちょっと問題もあります。


この川がそうなのですが、あまりに短い川なので、なんとなく yar-muk-usi とは無縁に思えます。「塞がる」と「破れる」を繰り返していそうなのは……この辺だと風蓮川あたりでしょうかね。もともとは風蓮川河口あたりの地名だったのであれば、yar-muk-usi 説も充分あり得そうな気がするのですが。

東梅(とうばい)

to-paye?
沼・行く
(? = 典拠あり、類型未確認)
なんとなーく和名っぽい響きの地名ですが、これも立派なアイヌ語地名のようです。今回も「北海道の地名」から。

 風蓮湖東端と温根沼(オンネトー)沼口との間の土地の名。東梅と春国岱の間は海と湖の間に水が通じている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.240 より引用)
現代の地図で見た限りでは、ギリギリ繋がっていないようにも見えるのですが、それはさておき。

永田地名解は「トーパイェ to-paye(沼行き)。オンネトーの水行きてフーレン湖に注ぎたる義なり」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.240 より引用)
ふむふむ。確かに to-paye で「沼・行く」という意味になりますね。

トー・パイェ「湖に・行く(処)」で,永田氏のいうように,水が行く意か,人が行く処だったのか,この形だけからは分からない。とにかく風蓮湖の東の入口の処の名であった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.240 より引用)
湖沼の出口は to-put(沼・口)となる場合が多いのですが、風蓮湖の場合は「湖・行く」という表現をしているのが意味深長ですね。どちらかと言えば温根沼の「出口」のほうが to-put と呼ぶにふさわしい形をしているように思えるので、その重複を避けるために to-paye という言い方をしたのかもしれませんね。

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