2012年8月12日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (66) 「音江(音江法華)・江丹別」

 


今日はちょっと対策、じゃなくて大作?になってしまったので、2 ヶ所にしてみました。長すぎる・短すぎる等ありましたらご意見ください。



音江(おとえ)

道央道に「音江 PA」がありますが、地名としての「音江」はむしろ深川 IC の近くにあるので、「あれっ?」と思わせますね。まずは山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。

 深川市内の地名。深川市街から橋で石狩川を南に渡った処が音江地区で,音江市街は橋から南西に約 3 キロ行った処である。もとは音江法華といった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.90 より引用)

ふむふむ。

 永田地名解は「オトゥイェポㇰ o-tuye-pok。川尻の潰る山下。此川は山よりにはかに流れ下りて川尻処々へ切るる故に名く」と書いたが,少々変な解である。o-tui(-ush)-nai「川尻の・切れる(・いつもする)・川」ぐらいの名であったろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.90 より引用)

確かに「川尻の潰る山下」はちょっとおかしいですね。かといって山田さんの説も無条件に首肯できるものでは無さそうに思えます。

その川尻は石狩川岸の急斜面を流れ下っていた(今は跡しかない)。その pok-ke (下の・処)だと石狩川で何だか妙である。もしかしたら o-tui がその山名にも使われていて,その下の処の意ででもあったか,どうも分からない名である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.90 より引用)

うぅーむ、さすがの山田さんも「どうも分からない」としてしまいましたね。

オトエポッケ → オトエヌプリ

山田さんは、昭和 52 年 3 月に刊行された「深川市史」に寄稿した文章にて、次のようにも記しています。

 (三)松浦日誌に現れた音江
(中略)
〔十勝日誌〕(安政五年陸行。イジヤンより)出立し廿余丁ヲトイノホリ小川、過て山に上る。雑木立五六丁シイベヌカル小川。
(山田秀三「アイヌ語地名の研究 4──山田秀三著作集」草風館 p.203 より引用)

この「ヲトイノホリ」がポイントで、おそらく o-tuye-nupuri という山の名前だったのではないかと考えられます。即ち、(1) もともと o-tuye-nay(あるいは o-tuye-pet)という川があった、(2) その川の水源となる山を o-tuye-nupuri と呼んだ、そして (3) o-tuye-nupuri の麓の集落を o-tuye-pok-ke と呼んだ、という三段活用?があったのでは、という仮説です。確かに、これだとなんとなーく納得できるのも事実です。

まとめますと、o-tuye-pok-ke で「川尻・切れる(・山の)・下の・所」といったところでしょうか。ふぅっ。

江丹別(えたんべつ)

旭川市の北西部で、鷹栖町の西側、幌加内町の南に位置する地域です。一応、道央道に「江丹別トンネル」があるので、そこでご存じの方もいらっしゃるのではないかと。えー、今回は「角川──」(略──)から。

上川地方中央部西端,石狩川支流江丹別川流域。地名の由来には,アイヌ語のエタン??ペッ(漂う川の意)により,アイヌの舟が転覆して漂ったことにちなむ説(北海道蝦夷語地名解),エタンネペッ(頭の長い川の意)による説(アイヌ語地名解)がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.94 より引用)

ふむふむ。もし「エタンネペッ」であれば「恵岱別」と似た地名かもしれませんね。確かに地図を見ても、このあたりの支流としては割と奥深くまで遡らないと水源に辿り着けない水系にも思えます。念のため山田秀三さんのご意見も伺いましょうか。

 旭川市西部の川名,地名。永田地名解は「エタンㇷ゚・ペッ。漂川。土人舟を覆し漂ひたる川」と書いたが,何だか後人の説話らしい解である。旭川市史の解(知里博士)が「語源はよく分からない。或いはエ・タンネ・ペッ(e-tanne-pet 頭・長い・川)の義でもあろうか」とした意見を採りたい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.96 より引用)

うーん、自分も全くの同意見です。

なおすぐ近い処の近文の懇意な荒井源次郎翁と話したら「古い人は,エタンベツは和人が縮めた名だ,ほんとはエトコタンネベツと呼ぶのだといっていましたよ」と話された。この川に入ると,確かにエトコ(etok 水源)がタンネ(tanne 長い)川である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.96 より引用)

なるほど! これは腑に落ちる説ですね。ただ、とりあえず今の所は e-tanne-pet で「頭・長い・川」としておきましょう。

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