2013年8月25日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (136) 「安別・モケウニ沼・狩別」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

安別(やすべつ)

安別は浜頓別町の地名で、クッチャロ湖(小沼)の西側に位置します。てっきり「あんべつ」だと思っていたのですが、なんと「やすべつ」が正解だったらしく……。さて、一体どういった意味なのでしょうか?

今回も、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみます。

 浜頓別町字安別は、天北線山軽駅から浅茅野の方へ少し戻って、小沼のふちを西に回り込んだところの部落。昔は湖の一部であったのが次第に乾燥したところと思われる。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.189 より引用)

こういった、簡易な地誌的な文はありがたいですね。ちなみに、天北線には「安別仮乗降場」もありました。安別の集落に向かうには、安別仮乗降場を使うのがもっとも近かったと思われます。

安別はヤ・ウㇱ・ペッのつまったものらしい。ヤは網のことで、それをいつも使う川という意味。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.189 より引用)

ふーむ、「ヤ」と聞くと、「陸地」という意味の ya を思い起こしてしまうのですが、安別の ya は「網」という意味なんですね(確かにそういう意味の単語も辞書に載っています)。ya-us-pet で「網・多くある・川」となりそうです。

モケウニ沼

猿払村浅茅野にある沼の名前です。マイナーな地名なのか、このあたりでは抜群のヒット率を見せていた「アイヌ語地名解」にも、また定番の「北海道の地名」にも記載がありません。案の定、河川や湖沼にはからきし弱い「角川──」にも記載が無かったのですが、なんと「永田地名解」に記載がありました。

Mo keuni  モ ケウニ  枯木アル處 「ケウニ」ハ墓ニアラズ此地ノアイヌハ墓ヲ「チシヨマニ」ト云フナリ
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.434 より引用)

ふむふむ。mo-kew-ni で「小さな・骨・木」といった意味なのですね。kew は「死体」あるいは「骨」といった意味なのですが、kew-ni で「死したる木」即ち「枯れ木」と解釈するのでしょう。

ただ、この調べ物をしていて、少々気になる情報がありました。他ならぬ知里さんの「──小辞典」に、次のような文章があったのですね。

②語原は po (子)から出る。地名においてはとくに二つの場合をさす。(i)二つのものが並んでいるばあいに大きい方を親と考え,それに対して小さい方をさす。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.60 より引用)

はい。ずずずいっと中略しまして……続きます。

同じソーヤ郡のオンネ・ケゥニ[Onne-Kewni(親・ケゥニ)]に対するモ・ケゥニ[Mo-Kewni(子・ケゥニ)]など。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.60 より引用)

猿払村も宗谷郡ですから、この「モ・ケゥニ」は「モケウニ沼」のことだと思われるのですが、ところが「オンネ・ケゥニ」に相当する沼が近くに見当たらないのです。モケウニ沼より小さい沼は沢山あるのですが、モケウニ沼の兄貴分に相当する沼が見当たらないのですね(「ポロ沼」があるのですが、ちょっと遠いような気も)。これは今後の研究課題になりそうです。

狩別(かりべつ)

エタンパック山のあたりに源を発し、猿払村の中央部を西から東に流れる川の名前、および流域中部の集落の名前です。

狩別の「狩」は「石狩」の「狩」ということで、察しのいい方は想像がつくかもしれませんが……。今回は久しぶりに山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 猿払川下流に西から注いでいる支流の名。松浦図では,ポロ沼に注いでいた当時の姿で描かれカレと書いてある。永田地名解は「カリ。曲り(川)。此地のアイヌはカリの語義を知らず」と書いた。湿原の中を曲がり曲がって流れていた川なので kari-pet (曲がる・川)と呼ばれていたのが狩別となったのであろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.168 より引用)

やはり……。kari-pet で「回流する・川」のようです。まぁ、日本の川はとても良く改修されているので、回流する川も最近では滅多に見られなくなりましたが、海を越えてサハリンのあたりに行けば、成り行き任せに回流する川の姿を見ることができます。きっとこの狩別川も、昔はあんな風だったのだろうなぁ……と思いを馳せるのも面白いかもしれません。

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