2013年10月26日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (153) 「蘭泊・政泊・仙法志」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

蘭泊(らんとまり)

利尻島の西南部を占める「利尻町」の、ちょうど真ん中のあたりにある地名です。ran と言えば「下りる」といった意味ですが、さて「下りる泊地」とはこれ如何に……。早速ですが、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみましょう。

神居から一キロほど南、小学校のある部落で元は瑠蘭泊と書いてルーラントマリと呼んだところであるが、文字が面倒なので璃をとってしまって蘭泊にしてしまったのであるが、今も古い人は「るらんどまり」と呼んでいる。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.210-211 より引用)

ふむふむ。元々は ru-e-ran-tomari だったということですね。「道・そこから・下りる・泊地」と読み解けそうです。現在の蘭泊はちょっとした崖のようなところに漁港があるのですが、確かに「道がそこから下りている泊地」と言えそうな感じもします。

政泊(まさどまり)

利尻町南部に「仙法志漁港」があるのですが、この仙法志漁港のあるあたりの地名が「政泊」です(ややこしい)。このあたりはもともと「仙法志村」だったらしく、村の中心地が「政泊」だった、ということのようです。

現地の雰囲気からは masar-tomari で「浜の草原・泊地」かなぁ、とも思わせるのですが、更科さんの「アイヌ語地名解」によると……

 神磯の直ぐ隣りの部落で、マサントマリがなまったのに、文字を当てはめたというが、これは積丹の余別にある政泊と同じ意味で、マタ・トマリであったらしい。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.211 より引用)

うーむ……。そう来ましたか。

無論マタントマリでも、マタ・アン・トマリであるとすれば、私どもの冬の舟入澗となるから同じ意味である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.211 より引用)

mata-an-tomari で「冬・われらの・泊地」となりますね。確かに仙法志漁港は南向きで、他の漁港と比べても日照時間は長そうなのですが……。

仙法志(せんぽうし)

「センポウシ」と言えば、現在は釧路町の「仙鳳趾」が有名ですが、利尻町の「仙法志」も同じ音の地名です。下手に推論を巡らせる前に、素直に更科さんの「アイヌ語地名解」を見ていきましょう。

 もとの仙法志村役場のあったところ、いまこの地方の中心地である。現在の市街のところはマオヤニといったところで、マウオヤニははまなすのあるところという意味。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.211 より引用)

ふむふむ。maw-o-yan-i でしょうか。だとしたら「はまなす・そこで・陸へ上がる・所」となるのですが、ちょっと変な感じもします。実は、maw には「はまなすの実」という意味の他にも「風」という意味もあるので、「風・そこで・陸へ上がる・所」としたほうが意味が明瞭になるような気がします。

さて、本題の「仙法志」ですが……

仙法志という古い地名の出ているのは松浦武四郎のもので、現在元村沢といったあたりにチエツホフシとある。チェプ・ポ・ウㇱで魚が(チェプ)わき立つ(ポㇷ゚)いつもいるところ(ウシ)とも言われている
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.211 より引用)

ふむふむ。chep-pop-us-i で「魚・湧き上がる・いつもする・ところ」ではないかということですね。

が、釧路厚岸の仙鳳趾については永田方正氏はチエップポオチで、小魚のいるところの意だと解いている。このどちらが正しいかきめることはむずかしいが、とにかく魚の多いところにはちがいないようだ。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.211-212 より引用)

そうでしたね。釧路の仙鳳趾は cheppo-ot-i で「小魚・多くいる・ところ」という解釈も存在したのでした。確かに、どちらでもおかしくないのですが、まぁ、どちらかは合っているでしょう、といった感じで(←)。

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