2012年9月15日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (71) 「遠軽・生田原・オンネルベシベ川」

 

相変わらず難問に頭を抱えつつ、傾向と対策は今日も行きます!

遠軽(えんがる)

inkar-us-i
見張る・いつもする・所
(典拠あり、類型あり)
瀬戸瀬から湧別川沿いに下っていくと、遠軽町の中心地があります。今回は「北海道駅名の起源」を見てみましょうか。

アイヌ語の「インカルシ」、すなわち「インカル・ウㇱ・イ」(見る・いつもする・所)で、いつも見張りする所から出たもので、駅のうしろに高さ 70m の巨岩があって「瞰望岩」と呼ばれ、現在も眺望台となっている。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.54 より引用)
読点が多いな……(そこか)。inkar-us-i で「見張る・いつもする・所」となりますね。ちなみに、Wikipedia には次のような記述があります。

駅名の由来
アイヌ語で「インガルシペ」(見張りをするところ)が転訛したもので、駅の周辺に瞰望岩と呼ばれる一枚岩があるところから。
(Wikipedia 日本語版「遠軽駅」より引用)
実は自分も inkar-us-pe だと憶えていたので「あれっ?」と思ったのですが、「インカルシペ」は遠軽では無く、札幌の「藻岩山」あたりの地名のことでした。混同して憶えていたようです。というわけなので、うぃきぺの「遠軽駅」の記載はちと怪しいので気をつけましょう。まぁ、大した違いじゃないと言えばそれまでなんですけどね。

生田原(いくたはら)

iktara
(典拠あり、類型あり)
生田原町は、遠軽町の南隣にあった自治体です。今は遠軽町と合併してしまいました。「原」は濁らずに「ハラ」または「ワラ」と読むので要注意です。

では、「角川──」(──)を見てみましょう。

古くはイタラ・イタラプトと称した。網走地方中央南部,湧別川支流生田原川流域。イタラはアイヌ語イクタラの訛りで「笹」を意味する(北海道蝦夷語地名解)。地名はイクタラに「原に田を生む」の意の漢字をあてたものという。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.108 より引用)
ふむふむ。iktara は「笹」だと言うのですが、手元のアイヌ語辞書ではいずれも確認できません。頼みの山田秀三さんもこれについては華麗にスルーしてしまっています。うー、手詰まりのようです。とりあえず iktara で「」ということにしておきましょうか。

「丸瀬布」でも感じたのですが、このあたりのアイヌ語?地名には不思議なものが多いですね。単純に考えれば方言の違いなんでしょうが、オホーツク海沿いにはアイヌ以外の先住民族もいたのかな、などと想像してしまいます。

オンネルベシベ川

onne-ru-pes-pe?
長じている・路・に沿って下る・もの
(? = 典拠未確認、類型多数)
遠軽町生田原と佐呂間町の間の旭トンネルのあたりに源を発し、佐呂間別川に流れ込む川の名前です。onne-ru-pes-pe で「長じている・路・に沿って下る・もの」という意味になります。ru-pes-pe は「留辺蘂」の語源でもあるのですが、一般的には「峠道」といった意味の言葉です。

遠軽から佐呂間に抜けるルートは、現在では国道 333 号が通っていますが、この地名(川の名前)から想像するに、昔から広く使われてきた「峠道」だったのかも知れません。

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