2012年12月2日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (94) 「重蘭窮・仙鳳趾・尻羽岬」

 


さぁ、皆さんお待ちかねの「釧路町のアイヌ語地名」の時間がやってきました(笑)。



重蘭窮(ちぷらんけうし)

厚岸湾の西岸で尾幌の南に位置する地名です。地形図を見た感じでは、尾幌から重蘭窮の間の海岸は断崖になっていますが、重蘭窮のあたりで少し緩やかな斜面になっているようです。

で、「読めないアイヌ語地名」として有名な「重蘭窮」の解釈ですが……、今回は永田方正翁の「北海道蝦夷語地名解」から。

Chip ranke ushi チㇷ゚ ランケ ウシ 舟ヲ下ス處 山中ニテ舟ヲ作リ此處ニ舟ヲ下ス處
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.334 より引用)

とあります。前述の通り、このあたりは山から海に出やすい地形です。ですので chip-ranke-us-i で「舟・降ろす・いつもする・所」と見て間違いないでしょう。

仙鳳趾(せんぽうし)

「重蘭窮」はすごく簡単な地名だったのですが、今度はそう簡単にはいかないようです。山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

 大字仙鳳趾は厚岸湾西海岸から尻羽岬を回って太平洋岸までの広い土地であるが,元来の仙鳳趾は湾岸の南部で,昔は聞こえた漁場である。仙鳳寺とも善法寺とも書かれた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.259 より引用)

ふむふむ。「寺」ではなく「趾」という字を充てたのは、原音に忠実たれと願った人の意思でしょうか。ありがたい話ですね。

 現在仙鳳趾部落のある処は,漁場の移動から今の処になったものらしく,元来はその南の方の海岸の古番屋川の処だったようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.259 より引用)

釧路町(釧路市ではない)のこのあたりは、基本的に断崖絶壁になっているところが多くて、わずかに残る砂浜のあたりに番屋を建てていたようですね。ただ、古番屋川の河口のあたりはとても平地が狭く、集落の規模を拡大するのも難しかったのかも知れません。

さて、本題に戻りますが……

 松浦氏東蝦夷日誌は「センポウジ。本名チエツポフシにて魚涌立(わきたつ)と云儀か。此湾鯡,鮫,雑魚多きが故号しと。当所は小沢にして其崖の上に地を曳,屋作りす」と書いた。彼はチェッ・ポㇷ゚・ウㇱ・イ(chep-pop-ush-i 魚が・跳ねる・いつもする・処)と解したのだった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.259 より引用)

ふむふむ。pop という語彙はあまり目にすることが無かったのですが、「(水などが)湧き上がる」という意味のようですね。charse と同様にオノマトペなのかも知れません。

続きです。

 古い上原熊次郎地名考は「チヱツポヲチなり。則小肴の生ずと訳す。此川にいわな,やまめの多くあるゆへに地名になすといふ」と書いた。また明治の永田地名解は「チェㇷ゚・ポ・オチ(小魚居る処)。鯡多く居る処なるを以て号くとアイヌ云ふ」と書いた。この二つの解は,捕れる魚の名や,そのいる処を川としたり海とした点は違うが,地名の形はチェㇷ゚ポ・オチ←cheppo-ot-i(小魚・多くいる・処)で,松浦氏の書いた形よりも自然な地名のように思われる。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.260 より引用)

お見事です。cheppo-ot-i で「小魚・多くいる・所」と解釈するのが良さそうな感じですね。

ちなみに、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」には、次のような記載もあります。

──昔から厚岸湾では鰊がとれたが、この地方では鰊をヘロキといわず、チェッポ(小魚)と呼んだかどうか不明である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.268-269 より引用)

そうですね。北海道の北西岸(増毛とか)では「ヘロキカルシ」という地名にも見られるように、鰊は「ヘロキ」と呼ばれていました。

尻羽岬(しりぱみさき)

さぁ、「仙鳳趾」で手間取ってしまったので、最後はあっさりと行きましょう。「尻羽岬」は、厚岸湾と太平洋の間にそびえる岬です。これは sir-pa で「断崖・崎」と言った意味ですね。知里さん風に言えば「大地の・頭」といった感じでしょうか。

山田秀三さんの「北海道の地名」も見ておきましょう。

シリパの名は諸地に多いが,この岬と余市のシリパはその代表的なものである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.260 より引用)

ふむふむ。確かに余市にも「シリパ岬」がありますね。釧路の「尻羽岬」はこちらで、


余市の「シリパ岬」がこちらです(縮尺が異なります)。


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