2011年6月5日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (54) 「瀬棚・真駒内川・太櫓川・遊楽部川」

 


はい、本日もマニア向けの話題でお届けします(←)。いつか書籍化するのが夢です(←←



瀬棚(せたな)

今では、全国的に悪名高い市町村合併のおかげで「せたな町」になってしまいましたが、もともとは「国鉄瀬棚線」の終着駅がある町で「瀬棚町」という名前でした。お隣の「北檜山」よりも知名度は高かったと思うのですが、まぁ……いろいろあったんでしょうねぇ。ひらがなになったとは言え、「せたな」の音が残ったことだけでも喜ばしいことなのかも知れません。

「角川──」によれば、

古くはセタナイ・せた内・瀬田内・勢多内とも書いた。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.782 より引用)

とあります。どうやら「セタナイ」という音だったことは間違いなさそうですね。seta-nay で「犬・沢」と言った意味になることが考えられますが、少々意味不明な雰囲気も漂います。

地名はアイヌ語にちなみ,「夷語セタナイとは則犬の沢と訳す。扨(さて)セタとは犬の事,ナイとは沢の事なれども,此故事未分といふ」という説(蝦夷地名考并里程記)や,セタルペシュペナイ(犬路川の意)が縮まったとする説(北海道蝦夷語地名解)がある。また,松浦武四郎「再航蝦夷日誌」には,「セタナイ。訳而犬の沢と云か。むかし此処に而犬を夷人が海ニ沈めしより号(く)」と見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.782 より引用)

「セタルペシュペナイ」という新説も出てきましたが、ここで言う「ルペシュペ」は「留辺蘂」の由来となったアイヌ語と同じで、ru-pes-pe のことだと思われます。「道・沿って下る・もの」ということで、一般的には「峠道」のこと、のようですね。なので、seta-ru-pes-pe-nay ならば「獣道つきの川」あたりの意味になるのかもしれませんが、他にあまり例を見ない地名ですし、実際にそんな川があったのかどうかも良く判りません。意外と謎を秘めた地名だと言えそうです。

真駒内川(まこまないがわ)

「真駒内」と言えば、「ああ、札幌の……」とか、「地下鉄の……」とか、「オリンピックの……」とか、「自衛隊の……」とか、色々と出てきそうですが、とりあえず札幌の真駒内のことを思い浮かべる方が大半かなぁ、と思います。ただ、せたなにも「真駒内」はあってですね……。

どちらの「真駒内」も、たぶん由来は同じで、mak-oma-nay ではないかとのこと。「山奥に・入る・沢」(あるいは「山奥から・出てくる・沢」)といった意味だと思われます。ちなみに「真駒内」の頭に「トー」(沼)がつくと「苫小牧」になります。これホントの話。

太櫓川(ふとろがわ)

アイヌ語に由来する地名で「なんとか太」といえば、大抵は nantoka-putu で「なんとか川の河口」という意味だったりするのですが、今回はのっけから「太」が出てきました。さてどういう意味なんでしょうか? 山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

太櫓の名について上原熊次郎地名考は「フトロ。夷語ピトロ也。小石の有るといふ事。此所鯡網などの足になす小石,または〓の碇石になす石等多く有る故字名になすといふ」と書いた。永田地名解も「ピトロペッ。石川の義」とした。pit-or-pet(石・の処の・川)の意。ただし下流筋は全くの泥川で,網の重りに使うような pit(小石)は中流以上でないと見当たらないようであった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.449 より引用)ISBN4-88323-114-3 ※「〓」は本文中では「□」

なるほど。どうやら pit-or-pet で「石・中にある・川」と見ればいいみたいですね。

遊楽部川(ゆうらっぷがわ)

脳内に「東京でひとつ~ 銀座でひとつ~」というメロディラインが流れたのですが、違う歌でした(←

……えーと、遊楽部川です(←)。山田秀三さんによると、これは yu-rap で「温泉・下る」という意味なのだとか。「あれ、こんな所に温泉なんてあったかな」と思ったのですが、遊楽部岳のまわりには「臼別温泉」「平田内温泉」「八雲温泉」などなど、いろいろと温泉?があるようで。ただ、肝心の遊楽部川の上流には、営業中の温泉が見当たらないのですが、実は隠れた源泉がある……のかも知れませんね。

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