2014年3月2日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (181) 「トウヤウスベ山・布礼別・布部」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

トウヤウスベ山

十勝岳連峰を構成する山のひとつで、布部川の源流のあたりに聳える山の名前です。

この「トウヤウスベ」ですが、to-ya-us-pe あたりかなぁ、と思います。to-ya-us-pe であれば「沼・岸・そこにある・もの」となりますね。

地形図を見た感じでは、トウヤウスベ山と富良野岳に挟まれたあたり(布部川流域)は「原始ヶ原」と呼ばれる湿地帯?のように見受けられます。そう考えると、一応この解釈で合ってるんじゃないかなー? と思ったりもするのですが、いかがでしょうか?

布礼別(ふれべつ)

富良野市の東部、前富良野岳の麓に広がる高台の地名です。え、hure-pet で「赤い・川」なのは自明なんじゃないかって? 手を抜いたんじゃないかって? あ、いや、決してそんな訳では……(汗)。

で、ではっ。山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

布礼別川 ふれべつがわ
 空知川を富良野川川口から僅か上った処に北から注ぐ川の名。フレ・ペッ(hure-pet 赤い・川)の意であろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.71 より引用)

……(汗)。ま、まだ続きがありますから!

同名が諸地に多い。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.71 より引用)

……()。セ……セカンドオピニオン行ってみましょう!

語源はアイヌ語のフレ(赤い) べッ(川)で水が濁っているか川底が赤さびているから出たものである。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.121 より引用)

……そりゃそーですよね。このままではちょっと残念なので、前説も見ておきましょうか。

富良野市鳥沼の東の高台の集落を布礼別という名で呼んでいる。しかし本当の布礼別という川はこの集落の中を流れないで、ずっと南の山かげの方を流れ、山地から平野に出ると二つに分かれて、西の方に流れたのは布部川に合流し、北上した流れはペぺルイに合流している。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.121 より引用)

あれ? 現在の地形図を見た限りでは、布礼別川はダイレクトに空知川に注いでいるようなのですが……。

だが古い地図を見ると、布部川と並んでその北の方を流れ空知川に落ちていることになっている。なにかの都合で人工的に切りかえたか、洪水で変ったものか知らないが、布礼部落とは全く縁のない所をうねっている。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.121 より引用)

んー、おかしいですね。もしかしたら、更科さんは「山手幹線水路」と勘違いされていたのかも知れません。富良野に限った話では無いのですが、農業用水を安定して供給するために、大きな川の上流から水を引いて、山の麓に大規模な用水路を通すことが良くあります。山手幹線水路と布礼別川は立体交差しているようなのですが、もしかしたら以前は布礼別川の水も幹線水路に通していたのかもしれませんね。

布部(ぬのべ)

JR 富良野駅のお隣の駅が「布部駅」です。近くに「布部川」も流れていますね。

「布部」は駅の名前なので、「北海道駅名の起源」を見てみましょう。

  布 部(ぬのべ)
所在地 富良野市
開 駅 昭和2年12月26日
起 源 アイヌ語の「ヌモッペ」、すなわち「ヌム・オッ・ペッ」(クルミの多くある川) から出たもので、これがなまって「ヌノッペ」といい、「布部」をあてたものである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.54 より引用)

ふーむ。「クルミ」とは珍しいような……。num-ot-pet で「クルミ・多くある・川」なんですね。ちなみに、「布礼別川」と「布部川」は南北に並んで西流している川なのですが、どちらも「布」の字が当てられているのは、由来から考えると全くの偶然のようですね。音が似ているから同じ字を当ててしまえ、ということだったのでしょう。

布部駅の近くにある「筑紫岳」については、chi-kus-i (「我ら・通行する・ところ」)の可能性もあるなぁ……と思ったのですが、何の確証も無いのでスキップしておきます。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

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