2014年3月15日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (184) 「ニニップナイ沢川・銀沢川・岡春部」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

ニニップナイ沢川

ni-nip-nay???
木・柄・川
ni-ni-pu-nay???
木・倉・川
ni-uk-nay???
木・拾う・川

(??? = 典拠なし、類型未確認)
ニニップナイ沢川は、鵡川の支流の双珠別川に占冠 IC の近くで合流する小河川です。占冠村の西部には「ニニウ」という地名があるのですが、それとの関連はあるのでしょうか。

「ニニップナイ」という音からは、ni-nip-nay木・柄・川)や ni-ni-pu-nay木・木・倉・川)といった想像ができるのですが、どちらも今ひとつしっくり来ません。

ちょっと気になったので、明治期の地図を調べてみました。すると現在の「ニニップナイ沢川」のところに「ニユツクナイ」とあります。もし、仮に「ニユツクナイ」が原型に近いのであれば、ni-uk-nay で「木・拾う・川」だった可能性もあるかもしれません。難点は ni-uk という地名の例を他に知らないところですが……。

銀沢川(ぎんさわ──)

nupuri-pa-oma-nay?
山・かみて・そこにある・川

(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
旧・日高町の西部を流れる沙流川の支流の名前です。国道 237 号線にはこの川を「銀沢橋」で越えています。というわけで、今回は我らが「角川──」(略──)から。

往時沙流川で砂金掘りが行われ,銀沢橋はその名残り。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.173 より引用)
ふむふむ。何ともピントの合わない話になっていますが、気にせず行きましょう。とりあえず、「銀沢川」は和名っぽいですね。

というわけで、明治期の地図を見ているのですが、そこには「ヌプリパオマナイ」とあります。nupuri-pa-oma-nay であれば「山・かみて・そこにある・川」となりそうですね。同名の川が留辺蘂町にもあったようです。

岡春部(おかしゅんべ)

o-kas-un-pet
河口・仮小屋・ある・川

(典拠あり、類型あり)
どうやら現在は「富岡」という地名に改称されたみたいですが、川の名前としてはまだ現役のようです(そんなに難読地名でもないと思うのですが、なんで変えちゃったんでしょうかね……)。

さぁ、今回も「角川──」を見てみましょうか。

地名は,昔十勝から攻めこんで来た十勝アイヌ夜盗団が岩知志で,老婆の機転でたてた目釘のゆるんだ蛇の音をエペタム(物を食う刀)と間違えて退却し,途中の川で炊事を始めたとき日高アイヌの急反撃にあい杓子を忘れて逃げ去ったという伝説に由来し,「忘れた杓子のある川口」の意でオカシュップウンペットと称したことによる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.264 より引用)
久々に「十勝アイヌの武勇伝」が出ましたね(笑)。o-kasup-un-pet で「河口・シャクシ・ある・川」と解釈できます。どこを見ても「忘れた」というのは出てきませんが……。

もっとも、この手の「説話」は面白おかしい反面、ただのこじつけである可能性もかなり高いわけでして、実際には o-kas-un-pet だったと考えたほうが自然だと思います。意味は「河口・仮小屋・ある・川」ですね。

念のため更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」も見ておきましょうか。

 岡春部川(おかしゅんべがわ)
 沙流川の右支流。オ・カシ・ウン・ぺで川口に狩小屋のある川の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.79 より引用)
はい。この解は全く同感です。

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