2015年5月9日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (247) 「刺類・オッカバケ川・モセカルベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

刺類(さしるい)

羅臼町北部の川名・旧地名です(現在の地名は「海岸町」)。では早速ですが、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

永田地名解は「シャシルイ。昆布多い処」と書いた。シャシ・ルイ(shashi-rui 昆布・甚だしい)の意であろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.228 より引用)

なるほど。sas-ruy で「昆布・甚だしい」と考えて良さそうですね。ruy というのは時折地名に現れる(ベベルイ川など)のですが、「甚だしい」というよりは「大変多い」と解釈したほうがしっくり来る場合が多いようです。

なお、この「刺類」ですが、「羅臼町史」には次のようにあります。

○サシルイ
 海岸町の一部、川などに名が冠されている。夷名であり「砥石あるところ」との意味である。
(羅臼町史編纂委員会・編「羅臼町史」p.57 より引用)

確かに ruy には「砥石」という意味もあるのですが、これだと「サシ」の意味がちょっとわからなくなりますね。

ちなみに、「角川──」(略──)は両論併記だったようで、

サシルイの地名の由来には,アイヌ語のシャシルイ(昆布の多い所の意)による説(北海道蝦夷語地名解), サシルイ(川上に砥石があるの意)による説(戊午日誌)がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.343 より引用)

戊午日誌ということは松浦武四郎の解だということになりますね。今度は「川上に砥石がある」という話になっているのですが、どう解釈したら「川上に──」となるのか、ちょっと良くわからないですね……。

オッカバケ川

サシルイ川の北隣を流れている川の名前です。永田地名解には「オチカパケ」として、次のような注釈が記されています。

オチカ」ハ松前ノ方言ニテ下リ澗ト云フ義ナリ南向ノ灣ニシテ南風(クダリカゼ)ヲ防グタメニ沖ノ方即チ「ハケ」ニ岩アリテ之ヲ圍フ此内ニ於テ鮏鯇「チライ」等ヲ漁スルト云フ
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.386 より引用)

なーんか、尤もらしいことが書いてありますね。曰く、南風を避ける岩が沖にあるので「オチカ・ハケ」だと言うのですが……。それにしても、この北海道の東の果てで「松前の方言」が出てくるのは流石に違和感がありますね。

もっとも「岩」説は永田地名解のオリジナルでも無かったようで、松浦武四郎も次のように記していたようです(孫引きですいません)。

松浦氏知床日誌は「ヲチカバケ。川有,両岸峨々たる高崖の所の川口に螺の如き黒岩有る故に号く」としたが,意味は研究が要りそうである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.228 より引用)

ちなみに、知床半島の両側に何故か似たような地名が存在するのは有名ですが、この「オッカバケ川」もその一つで、山の向こうの斜里町にも「オチカバケ川」が存在します。

他には羅臼町北部の「ルサ」と斜里町北部の「ルシャ」や、羅臼町南部の「峯浜町」と斜里町の「峰浜」などがありますね。「ルサ」と「ルシャ」の一致は必然的なものとする見方もあります。

さて、「オッカバケ」の意味に戻りましょう。現在主流となっている解釈とはかすりもしない謎な地名解を数多く残しているバチェラーさんは、次のように記しています。

OCHIKAPAKI(オチカパキ)──O-chikap-ak-i「鳥を射つ所」。
(J・バチェラー「アイヌ地名考」草風館『アイヌ語地名資料集成』に所収)

む、バチェラーさんの解にしては、意外とマトモな感じがしますね……(汗)。

一方、知里さんは(斜里町のオチカバケ川の解として)次のように記していました。

 オチカバケ「オチカペワキ」の訛り。「オ・チカㇷ゚・エワㇰ・イ」(o-chikap-ewak-i そこに・鳥が・住んでいる・所)通称「鷲の巣」。
(知里真志保「知里真志保著作集 3『斜里郡内アイヌ語地名解』」平凡社 p.261 より引用)

ああなるほど! o-chikap-ewak-i で「そこに・鳥・住んでいる・所」と解釈できそうですね。随分とすっきりしました。

モセカルベツ川

「刺類」と「オッカバケ」で随分と引っ張ってしまったので、「モセカルベツ川」はサクっと行きましょう。この「モセカルベツ」は漢字で「茂瀬苅別」と書かれることもあるようですね。

地名解ですが、mose-kar-pet で「イラクサ・採る・川」と解釈できそうですね。ただ、mose は「イラクサ」を意味する名詞として使われる以外に、mose-kar で「草を刈る」という意味もなるので、

伝承でもないと,どっちだったか分からない。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.228 より引用)

となってしまうのだとか。

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