2014年2月16日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (177) 「置杵牛・ニタチパウマナイ川・オヤウンナイ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

置杵牛(おききねうし)

美瑛町中心地の北側を流れる川の名前で、その上流に「置杵牛」の集落があります。

今回は、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。

オ・キキニ・ウㇱとはオ(川口)にキキニ(キキンニでえぞうわみずざくらまたはななかまどのこと)のウㇱ(沢山あるところ)の意味で、この木で棒状の木幣をつくって魔除けにした。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.133 より引用)

ふむふむ。o-kikinni-us-i で「川尻・エゾノウワズミザクラ・多くある・ところ」なのですね。

一方で、山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のような記載があります。

置杵牛川は明治31年5万分図でも,明治29年道庁版20万分図でもオシキナウシと書かれてあり,旭川市史の解も「オシキナウシ o-shikina-ush-i(川尻に・ガマ・群生する・所)」と書いている。シーキナは「蒲」のことであった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.111 より引用)

うーむ、これはどうしたことでしょう。「キキンニ」と「シーキナ」では意味が異なりますし、発音もちょっと違います。転訛したと考えるのはちょっと厳しそうな感じが……。

ただこの音と置杵牛の音が少し離れていることが気にかかる。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.111 より引用)

ですよね。

もしかしたら o-kene-ush-i「川尻に・はんの木群生する・もの(川)」とか,o-kikinni-ush-i「川尻に・うわみずざくら・群生する・もの(川)」ぐらいの別称があって,それが置杵牛となったのでもなかったろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.111-112 より引用)

うーん。そう考えるほかなさそうな感じではありますね……。

ニタチパウマナイ川

置杵牛川の支流で、上流に「新区画ダム」という、何ともユニークな名前のダムがあります。音からは nitat-pa-oma-nay かなぁ、と思わせます。

nitat-pa-oma-nay であれば、「湿地・かみて・そこに入る・川」となりますね。実際の地形もそんな感じに見えます。

……もうおしまいなのかって? ええ。たまにはあっさりと終わるのもアリかなぁ、と。次もちょっと面倒くさそうな雰囲気なので……(ぇ)

オヤウンナイ川

美瑛町の「しろがねダム」から美瑛川に注ぐ支流の名前です。知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」には、次のように記されています。

オヤウンナイ(Oyau-un-nai「蛇・いる・沢」)
(知里真志保「上川郡アイヌ語地名解」平凡社『知里真志保著作集 3』に所収)

あれ? oyau なんてアイヌ語はあったかな……? それに、アイヌ語の地名で「蛇がいる」という場合は、多くの場合「アレがいる」という風に言挙げを憚る場合が多いので、ちょっと違和感が……。

なお、アイヌ語で「蛇」を表す場合、kinasut あるいは kinasutunkur と言うのだそうです(kina-sut-un-kur で「草・根元・にいる・人」となりますね)。oyau とは似ても似つかないような……。

おっかしーなー、と思っていたところ、答が見つかりました。服部四郎さんの「アイヌ語方言辞典」によれば、「蛇」は樺太方言'oyaw と言うのだとか。知里さんは樺太に滞在した経験もあるので、'oyaw が樺太方言であることに気づかず、うっかりこのような解を出してしまった、という可能性がありそうです。

では、オヤウンナイはどういう意味か……という話になるのですが、o-ya-un-nay で「川尻・網・ある・沢」あたりでしょうか。白金温泉より更に奥に入ったところに「オヤウシナイ滝」という滝があるのですが、これも川の名前なのだとすれば、似たような由来があるのかもしれませんね。

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