2019年12月15日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (686) 「ポンポロベツ川・タンチベナイ川・ルマウシュナイ川・ポウルンベツ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ポンポロベツ川

pon-poro-pet
子である・{北見幌別川}

(典拠あり、類型あり)

道道 220 号「歌登咲来停車場線」で咲来峠を越えて枝幸町(旧・歌登町)に入ると、道道の右側を「ポンポロベツ川」が流れています。

旧・歌登町の北半分は「幌別川」(北見幌別川)の流域です(南半分は「徳志別川」)。「幌別」は poro-pet で「大きな・川」あるいは「親である・川」あたりでしょうか。そして pon- は「小さな」あるいは「子である」という意味なので、pon-poro-pet だと「小さな・大きな・川」という面白いことになってしまいます。

ただ、この場合の poro-pet は固有名詞として認識すべきで、つまりは pon-{poro-pet} で「子である・{北見幌別川}」と解釈すれば良い……ということになります。

今更ではありますが、山田秀三さんの「北海道の地名」の記載を引用しておきましょう。

語義はポン・ポロペッ「pon-poropet 小さい(支流の意)・幌別川」の意。この川筋を通って天塩川筋の咲来(sak-ru 夏の道)に越える。アイヌ時代からの,天塩・オホーツク海岸の重要交通路であったようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.174 より引用)

タンチベナイ川

tanne-pin-nay?
長い・谷・川

(? = 典拠なし、類型多数)

ポンポロベツ川は歌登本幌別で「上流川」と合流して「北見幌別川」となります。それにしても「上流川」というネーミングのストレートさは中々のものですね。

「タンチベナイ川」は、「上流川」の西支流です。ポンポロベツ川と上流川の間を流れていることになります。

「タンチベ」とは何だろう……と思ったのですが、明治時代の「北海道地形図」を眺めてみると、そこには「タン子ベナイ」と描かれていました。……なるほど、「子」が「チ」に化けたと言うことですね。そして「タン子」は tanne(長い)だと考えられそうです。

論点は、後ろの「ベナイ」が何だろうというところに移るのですが、pe-nay であれば「水・川」ということになり、若干変な感じがします。もしかしたら pin-nay で「谷・川」だった可能性もあるんじゃないかな、と考えています。tanne-pin-nay で「長い・谷・川」だったのではないでしょうか。

ルマウシュナイ川

rum-us-nay???
銛・ついている・川

(??? = 典拠なし、類型未確認)

「北見幌別川」の上流部は「上流川」という名前ですが、ルマウシュナイ川は上流川の上流部(旧・歌登町二股のあたり)で合流する南支流です。地理院地図には河川として描かれていますが、残念ながら川名の記載がありません。

「銛」(モリ)を意味する rum という語彙があります。ルマウシュナイ川は上流部で綺麗に二手に別れているので、そのことを形容した名前か……と思ったりもしたのですが、それであれば rum-ne-nay(銛・のような・川)となりそうな気もします。

ただ、改めて地形図を見てみると、ルマウシュナイ川の南西に形の良さそうな独立峰が二つ並んでいることに気がつきました。このことを指して rum-us-nay で「銛・ついている・川」と呼んだ可能性が、一応あるかもしれません。

あるいは ru-maw-us-nay で「路・風・いつもある・川」とも解釈できるかな、と考えてみました。ただルマウシュナイ川を遡るルートが交通路として妥当かと言われると、そうでは無いだろう……と思えます。

「タン子ベナイ」が「タンチベナイ川」に化けるご時世ですから、「ルマウシュナイ」が誤読・誤記なく伝わってきたと考えるのも楽観的すぎるのかもしれません。「ルスウシュナイ」だったと仮定して rus-us-nay で「毛皮・多くある・川」というのも考えてみましたが、毛皮が多くあるというのも若干良くわからない感じが……。

ポウルンベツ川

poru-un-pet
洞穴・ある・川

(典拠あり、類型あり)

北見幌別川の西支流の名前です。地名としては「ポールンベツ」表記のようです。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ホール」という名前の川が描かれていました。poru-un-pet で「洞穴・ある・川」と考えて良いのだろうなぁと思っています。川の流れが崖を抉って、洞穴のようになったところがあったのでは無いでしょうか。

但しその洞穴崩壊して今は無し、だったりして。

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」になかなか秀逸な解説文があったので引用しておきます。

 ポールンベツ
 歌登町二十一線のあたりの幌別川の支流、五万分の地図ではホーロンベツとなっている。そして右に分かれる方を岩屋沢と呼んでいる。その川上に岩屋と書いてあるところもある。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.203 より引用)

はい。確かに「岩屋ポウルンベツ川」という支流がありますね。

この岩屋はアイヌ語ではポㇽなので、ポㇽ・ウン・ぺッ(洞穴のある川)を続けていうとポルンペツになったり、ポロンペツに聞こえるのである
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.203 より引用)

あっ、「岩屋」の意味は poru でしたか! まさかの日本語・アイヌ語のダブル川名だったのですね。

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