2024年4月27日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1133) 「マカヨ・御仁田・トンケシ川・トンヤ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

マカヨ

makayo?
ふきのとう
(? = 記録はあるが疑問点あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
茶路小中学校」のあたりで茶路川に合流する「マカヨ川」という東支流があるのですが、地名としての「マカヨ」はこの川の流域を中心に、茶路川の東岸に広がっています。

東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「?カヨ」という川が描かれています。『北海道実測切図』(1895 頃) (1895 頃) にも、ほぼ現在と同じ位置に「マカヨ」と描かれています。

永田地名解 (1891) には次のように記されていました。

Makayo   マカヨ   蕗臺
永田方正北海道蝦夷語地名解』国書刊行会 p.322 より引用)
「蕗臺」は「ふきのとう」のことで、確かに makayo は「ふきのとう」を意味します。白糠町の「広報しらぬか」にて連載された「茶路川筋のアイヌ語地名」によると、「マカヨ」は「マカヨ・タ・ナイ」が略されたもので、makayo-ta-nay で「ふきのとう・刈る・川」では無いかとのこと。

確かに「マカヨ」という地名はそう考えるのが自然ですが、makayo-ta-nay という川名の原典はあるのでしょうか。白糠地名研究会の『アイヌ語地名と原日本人:先住者の心をたずねて』(1983) に makayo-ta-nay とあるのは確認できたのですが、できればもう少し古い記録が欲しいところです。

余談

現在、「マカヨ川」の傍にある「茶路小中学校」のあるあたりは「白糠町松川」という地名なのですが、『アイヌ語地名と原日本人:先住者の心をたずねて』の付録「白糠町内会の由来一覧」には次のように記されていました。

 マカヨ沢のマカヨはアイヌ語で「松のたくさん、おいしげっている川」という意味である。この川に架けてある橋の名は松の生えている川にちなんで、松川橋なので、原語のマカヨそのままでは町名としてはへんだということになり、検討の末、松川部落と名づけられた。
(松本成美、白糠地名研究会『アイヌ語地名と原日本人:先住者の心をたずねて』現代史出版会 p.271 より引用)
「マカヨ」が「松のおいしげっている川」というのは何かの間違いなのですが、果たして本当に「ふきのとう」が自生していたのか、微かに疑いも抱いてしまいます。あえて「ふきのとう」以外の解釈を考えてみるなら、mak-wa-o で「山手・に・ある」と読めたりしないかな……とも。

マカヨ川は途中で二手に分かれていますが、西側(地理院地図に「マカヨ川」と記されているほう)は、茶路川とほぼ並行する向きに流れているので、その事を指して「山手にある」と呼んだのかな……という想像です。

御仁田(おにた)

o-nitat(-un-pet)
河口・湿地(・そこに入る・川)
(記録あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
茶路川の西側の地名で、「協和橋」で(川の東側を通る)国道 392 号と接続しています。集落の南を「トンケシ川」が、北を「トンヤ川」が流れています。

東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「トンタヒラ」という地名と川が描かれていました。『北海道実測切図』(1895 頃) (1895 頃) には「トンケシ川」に相当する位置に「パナアンオニタトウンペッ」という川が描かれていて、「トンヤ川」に相当する位置には「ペナアンオニタトウンペッ」と描かれていました。

北海道地名誌』(1975) には次のように記されていました。

(通称)御仁田 (おにた) 中茶路の川向い農村。川口が湿地の意。
(NHK 北海道本部・編『北海道地名誌』北海教育評論社 p.698 より引用)
「御仁田」の南を流れる「パナアンオニタトウンペッ」は pana-wa-an-o-nitat-un-pet で「川下側・に・ある・河口・湿地・そこに入る・川」と読めるのですね。この長い川の名前を略しに略して o-nitat を「御仁田」と呼ぶようになった……ということだと思われます。

トンケシ川

tun-kes???
谷・しものはずれ
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
『北海道実測切図』(1895 頃) (1895 頃) に「パナアンオニタトウンペッ」という名前で描かれていた川です。pana-wa-an-o-nitat-un-pet で「下流側・に・ある・河口・湿地・そこに入る・川」と考えられるのですが、これが「トンケシ」に化けるメカニズムは謎です。

「谷川」を意味する tun-nay という語が『地名アイヌ語小辞典』(1956) に記載されているのですが、逆算的に tun を「谷」と考えるならば、「トンケシ」は tun-kes で「谷・しものはずれ」と解釈できるかもしれません。

「ケシ」は kes でアイヌ語の「しものはずれ」と考えて良いと思われるのですが、「トン」は o-nitat-un-pett-un の部分を切り出したものである可能性もあるかもしれません。純粋な意味での「アイヌ語地名」と呼べるかどうかは若干疑問が残るような気も……。

トンヤ川

tun-pa???
谷・かみのはずれ
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
『北海道実測切図』(1895 頃) (1895 頃) に「ペナアンオニタトウンペッ」という名前で描かれていた川です(環境著者に優しいコピペ書き出し)。pena-wa-an-o-nitat-un-pet で「上流側・に・ある・河口・湿地・そこに入る・川」と考えられそうです。

「しものはずれ」を意味する kes の対義語は pa で「かみのはずれ」を意味します。この川名も tun-pa で「谷・かみのはずれ」かもしれませんが、「トンケシ川」と同様に o-nitat-un-pett-un の部分を切り出したものである可能性もあるかもしれません。

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