2015年8月9日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (274) 「オタツニウシ川・磯分内・サンペコタン」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

オタツニウシ川

o-tat-ni-us-i
川尻に・樺・木・多くある・ところ
(典拠あり、類型あり)
国道 391 号「瀬文平橋」の近くで釧路川と合流する支流の名前です。まぁ極々一般的な解釈で問題のない川名なんですが……(汗)。

では、「戊午日誌」を見てみましょう。

また東岸並びて
     ホンヲタツ子ウシ
     ヲタツ子ウシ
等二川とも左岸。此川すじに樺木多く有るが故に号。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.471-472 より引用)
ということで、o-tat-ni-us-i で「川尻に・樺・木・多くある・ところ」と読み解けそうです。……確かに良くある地名なんですが、オタツニウシ川の東側に「乙西」という地名があるみたいなのですね。この「乙西」、「オタツニウシ」から来ているのであれば面白いなぁ……と。

磯分内(いそぶんない)

isepo-un-nay
うさぎ・いる・沢
(典拠あり、類型あり)
JR 釧網本線の「標茶駅」の次の駅が「磯分内駅」です。ということで、久しぶりに「北海道駅名の起源」から。

  磯分内(いそぶんない)
所在地 (釧路国)川上郡標茶町
開 駅 昭和 4 年 8 月15日
起 源 アイヌ語の「イソプンナイ」、すなわち「イソポ・ウン・ナイ」(うさぎのいる川)から出たもので、標茶町と弟子屈町の町境にある小川の沢にうさぎが多く住んでいたからである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.162 より引用)
うーむ。どうやら isepo-un-nay で「うさぎ・いる・沢」と解釈しているようですね。しかし「うさぎが多く住んでいた」というのは、ちょっと話を盛った感も禁じ得ないような……。

ということで、セカンドオピニオン行ってみましょう。山田秀三さんの「北海道の地名」から。

永田地名解の中に「和俗イシヨフンナイに訛る」と書かれたが,それがだいたいの原音で,イソプンナイ←イソポ・ウン・ナイ(isopo-un-nai 兎が・いる・沢)の意。道西,道央では,兎はイセポだが,十勝,釧路等ではイソポと呼んでいたのだという。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.272 より引用)
ふむ。山田さんも全く同意見のようですね。ちなみにこの「磯分内」は知里さんの「アイヌ語入門」でも取り上げられていて、

 この地名は起原にさかのぼれば isopo-un-nay で,isópo はこの地方のアイヌ語の方言で「ウサギ」,un は「そこに入る」,nay は「沢」, 全体で「ウサギの入る沢」ということである。
(知里真志保「アイヌ語入門 復刻─とくに地名研究者のために」北海道出版企画センター p.102-103 より引用)
うーむ。これでもか!と言わんばかりに「うさぎ」説ばかり出てきますね。何を気にしているかと言うと、戊午日誌のこの一文なんです。

又東岸に
     イシヨブンナイ
左り岸也。此川相応の川口のよし。其水源は三ツに分れ此間シユサモコタンのシ子ニウシよりヲン子ナイえ出る時に越たる川すじ也。イシヨフンとは、魚を取にいつにても行にとると云事なり。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.471 より引用)
つまり、「イシヨ」を iso、すなわち「獲物」(この場合は「魚」)と解釈することもできるんじゃないか、ということです。ただ、これだと「ブ」の音に相当する単語が出てこないのですね。無理やり解釈を考えてみれば iso-po を「獲物(魚)・小さい」であるとして、iso-po-un-nay で「獲物(魚)・小さい・入る・沢」と言えなくもないかな、と思ったりもしています。

サンペコタン

san-pe-kotan??
山から浜の方に出る・もの・村
(?? = 典拠なし、類型あり)
弟子屈町南部、釧路川の西岸に見える地名です。どうしてカタカナのまま残っているのだろう……と思ったのですが、どうやら「三平古丹」という字が当てられたものの普及しなかった、というオチのようです。

というわけで、今回は我らの「角川──」(略──)から。

 さんぺこたん サンペコタン <弟子屈町>
〔近代〕昭和22年~現在の弟子屈恥町の行政字名。三平古丹とも書く。もとは弟子屈村大字弟子屈村の一部。地名の由来は,アイヌ語のサンペコタンで「川のそばに乾す柵のある村」の意で,アイヌが釧路川をのぼるサケで干鮭を作ったところである。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.630 より引用)
確かに「柵」のことを san と言うのですが、「サンペコタン」の「サン」が san だとすると、「ペ」をどう解したものかわからなくなってしまいます。

アイヌ語で sampe と言えば「心臓」あるいは「心」「気持ち」「気分」という意味です。日本語では「都心」といった表現がありますが、この「サンペコタン」を「心臓部の村」と解するのは、さすがにちょっと無理があるような気もします。

となると……これは san-pe-kotan と考えるべきなのでしょうか。san は「山から浜のほうに出る」という意味ですから、「山から浜の方に出る・もの・村」と読み解けそうな気がします。何が出るのかはさっぱり不明ですが、地形から考えると鉄砲水あたりでしょうか。「竹内川」と「上竹内川」の合流部あたりの地名のようにも思えるので、雨が降った時は一気に増水しそうな感じがします。

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