2020年6月7日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (735) 「国富・シマツケナイ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

国富(くにとみ)

kur-uni-ru-e-kar??
影・そこにある・道・そこで・回る

(?? = 典拠あるが疑わしい、類型未確認)

共和町東部、国道 276 号が国道 5 号と合流するあたりの地名です。かつて国鉄岩内線に同名の駅がありましたので、まずは「──駅名の起源」を見てみましょう。

  国 富(くにとみ)
所在地 (後志国) 岩内郡共和町
開 駅 大正 2 年 9 月 21 日
起 源 付近に国富鉱山があり、銅を多く産出したため、その輸送のため駅の設置を見たもので、駅名もまた鉱山名によったものである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.34 より引用)

現在も集落の北東側に工場?がありますが、ここが元々は鉱山だったということでしょうか。どう見てもアイヌ語由来とは考えにくいのですが……、ところがなんと「角川──」(略──)には次のように記されていました。

旧小沢村の中で最初に開拓された地域で,米沢藩士山田民弥の「恵曽谷日記」の中に,「クルニルエカ人家一軒俗に濁川新茶屋といふ,ヲサワ(小沢)人家一軒,エナフ(稲穂)峠絶頂まで昼所より二里」とある。このアイヌ語のクルニルエカから国富の地名になったと思われる。明治 2 年青森の杉沢文吉が開拓に着手,南部茶屋を開く。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.506 より引用)

えっ、ということで慌てて昔の地図などを確かめてみたのですが、明治時代の地形図には既に「南部茶屋」と描かれていて、「クルニルエカ」という記録は確認できませんでした。「東西蝦夷山川地理取調図」や「西蝦夷日誌」、丁巳日誌「曽宇津計日誌」や「竹四郎廻浦日記」でも同様です。

「クルニルエカ」の意味をどう解釈するかですが、kur-uni-ru-e-kar であれば「影・そこにある・道・そこで・回る」と読めそうな気がします。「国富トンネル」ができる前の国道 5 号は、尾根を避ける形で西側に大回りをしていたようなので、もしかしたらそのことを形容した地名だったのかな……と思ったりもします。

kur-unikur-un-i かもしれませんが、「日陰のあるところ」という意味ではないかなと想像してみました。

シマツケナイ川

penke-samatki-nay
川上側の・横たわっている・川

(典拠あり、類型あり)

共和町国富で堀株川(ほりかっぷ──)に合流する北支流は三つありますが、「シマツケナイ川」は三つのうち真ん中に位置しています(国道 5 号沿い)。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ハンケシヤマツケナイ」という川が描かれています。また丁巳日誌「曽宇津計日誌」には次のように記されていました。

またしばし行て、
     ハンケシヤマツケナイ
此処左りの方小川也。上に少しの小山有。ハンケは下、シヤマツケは横、ナイは沢也。横合より流れ落しと云川也。街道にても此川源を通る也。しばし行、
     ヘンケシヤマツケナイ
当時此上に笹小屋と云て、番屋一棟有。春(是)街道通行の人を留る処なりしが、新道切開の後は相応の普請して、通行の諸有司も此処にて止宿する也。爰にはむかしも夷人家有しとかや。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.129-130 より引用)

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ヘンケ──」が描かれていなかったのですが、やはり「パンケ」と「ペンケ」はちゃんとセットになっていました。明治時代の地形図を見てみると、現在の「シマツケナイ川」の位置に「ペンケサマツケナイ」と描かれています。

「シマツケナイ川」は penke-samatki-nay で「川上側の・横たわっている・川」と考えて良いかと思います。「横たわっている川」というのは具体的にはどのような川なのだろう……という疑問が出てきますが、山田秀三さんは「北海道の地名」にて次のような考えを示していました。

本流に対して斜めについているのでなく,まるで横から入る形になっているからであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.473 より引用)

これは「ハンケシヤマツケナイ」こと「辰五郎川」についての記載ですが、単に横から入るだけではなく、川の流れ自体が緩やかである(横になっている)というのも条件に含まれるのではないかな、と考えています。

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