2019年6月8日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (636) 「祝津・塩谷」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

祝津(しゅくつ)

sikutut?
エゾネギ
si-kut-us-i?
大きな・崖・ある・ところ


「祝津」という地名は小樽と室蘭に存在します。どちらの都市も早くから栄えた港湾都市としての性格を持ち合わせますが、その両方に「祝津」が存在するというのは、……多分単なる偶然です(ぉぃ)。ちなみに室蘭の「祝津」が「しゅくづ」で、小樽の「祝津」は「しゅくつ」と読むようです。

「角川──」(略──)には次のように記されていました。

 しゅくつ 祝津 <小樽市>
古くはシクズシ・シクヅシ・シクチシ・シクジシなどともいい,敷次子とも書いた。明治 2 年祝津と表記が確定したが,読み方は「しゅくづし」で,昭和初期から「しゅくつ」と改まる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.696 より引用)

明治 2 年に「祝津」という表記が確定したとありますが、この時期に漢字表記が固まるというのはかなり早いほうだったように思えます。

永田地名解には次のように記されていました。

Shikutut  シクト゚ッ  山葱(ヤマラツキヤウ)滿山皆葱○祝津村ト稱ス
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.90 より引用)

sikutut は、知里さんの「植物編」では「エゾネギ」と記されています。山じゅうネギだらけというのもなかなか凄い感じがしますが……。

山田秀三さんの「北海道の地名」からの孫引きですが、知里さんは「山じゅうネギだらけ」とは違う解の可能性を考えていたようでした。

知里博士はこの地名を shi-kut-ush-i(全くの・岩崖・群生する・場所)ではなかろうかとの説を持っておられた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.494 より引用)

あー、si-kut-us-i で「大きな・崖・ある・ところ」ではないかという説のようですが、これは確かに「ありそう」な感じがしますね。ついでに言うと室蘭の祝津(しゅくづ)も近くに結構な崖がありますので、実はどっちも「崖」由来の地名なのかもしれません。

改めて、室蘭の「祝津」の解を確認してみましたが……あれっ? ああ、知里さんは室蘭の「祝津」の解として si-kut-us-i ではないか、と考えていたようですね。ただ、室蘭の祝津と同様に……というか、むしろ小樽の祝津のほうが、より si-kut-us-i という解に相応しい地形のような気もします。

塩谷(しおや)

so-ya?
水中のかくれ岩・岸


JR 函館本線で、小樽の次の駅が「塩谷」です。最近、後志自動車道の「小樽塩谷 IC」も開通したので、さらに知名度も向上した感じでしょうか。

駅名ですよね、ええ、駅名です……ということで(どういうことだ)、「北海道駅名の起源」を見てみましょう。

  塩 谷(しおや)
所在地 小樽市
開 駅 明治 36 年 6 月 28 日(北海道鉄道)
起 源 アイヌ語の「ショーヤ」(岩岸)から転かしたもので、宗谷とか、日高の庶野などと同一の意である。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.32-33 より引用)

ふむふむ。so-ya で「水中のかくれ岩・岸」と考えたようですね。一方で、より古い時代の記録である永田地名解には次のように記されていました。

Shū ya  シユー ヤ  鍋岩 「サパネクル」(酋長)ガ鍋ヲ岩ニ掛ケタリト云フ○鹽谷村ノ原名
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.91 より引用)

確かに「再航蝦夷日誌」や「東西蝦夷山川地理取調図」などにも「シウヤ」とあるため、永田説も検討の余地がありそうにも思えますが、「駅名の起源」が永田説を取らなかったのは「地名説話っぽい」と考えたからなのでしょうね。

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