2012年2月26日日曜日

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「日本奥地紀行」を読む (13) 東京・鉄道 (1878/5/24)

 

今日も引き続き 1878/5/24 付けの「第三信」を見ていきます。実は、この「第三信」には、「普及版」でカットされた部分は無いのですが、それもその筈……と思わせるほど、興味深い内容が凝縮されています。では、行きましょう。

関東平野

えーと、この「関東平野」のような、センテンスの題名についてなんですが、底本である「普及版」には記載が無くて、都度「イザベラ・バード『日本の未踏路』完全補遺」から拾ったものを合わせています。題名と文脈から「ここがこの小題に相当するだろう」とつき合わせて記しているのですが、もしかしたら間違いがあるかも知れません。

 切符は東京行きではなく、品川か新橋まで買う。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
日本には「東京駅」「横浜駅」といった、都市の名を冠した駅が存在しますが、ヨーロッパではこういった例は稀だと聞きます。日本最古の鉄道の起点が「新橋駅」を名乗ったのは、いずれ北進して「東京駅」まで延伸する計画が当初からあったと記憶しているのですが……どうでしたっけ。

不思議なのは、イザベラが「東京駅」「横浜駅」というネーミングに違和感を憶えていないこと……と書き始めて、誤読の可能性に気づきました。たとえば、東京から大阪の「天王寺」に行きたい場合、「天王寺まで」の切符を買うわけではなく、「大阪市内」までの切符を買いますよね。イザベラも似たような考えだったのかも知れません。

ただ、現実問題として、横浜と東京の間であれば、今でも「きっぷは行先の駅まで正しくお求めください」なわけで……。ヨーロッパのインターシティだとどんな感じなんでしょうか。

品川に着くまでは、江戸はほとんど見えない。というのは、江戸には長い煙突がなく、煙を出すこともない。寺院も公共建築物も、めったに高いことはない。寺院は深い木立ちの中に隠れていることが多く、ふつうの家屋は、二〇フィートの高さに達することは稀である。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
「江戸には長い煙突がなく」と言われて、「銭湯は……」などとバカなことを考えてしまいましたが、明治初期にはさすがに銭湯は殆ど無かったのでしょうか。

右手には青い海があり、台場を築いた島がある。大きな築山に囲まれた林の庭園もある。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
これは……! もしかしたら浜松町あたりの描写でしょうかね。線路の向こうには砂浜しか無かったでしょうから台場も見えたでしょうし、「林の庭園」は「浜離宮」のことかな、などと想像します。

左手には広い街道があり、人力車(クルマ)の往来がはげしい。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
これは「東海道」のことでしょうね。このあたりは、東海道が「国道 1 号」ではなくて「国道 15 号」になってしまっているのですが、これもいろいろと歴史的経緯があるようで興味深いです。

風変わりな姿

続いては「風変わりな姿」というセンテンスを見ていきましょう。

 合わせて四百の下駄の音は、私にとって初めて聞く音であった。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
これは……! 私も聞いたことがありません。どんな感じなんでしょうか。耳に心地よいものなのか、あるいは生理的に受け付けられないものなのか……。あ、靴音といえば、今日は 2/26 ですね。

この人たちは下駄を履いているから三インチ背丈がのびるのだが、それでも五フィート七インチに達する男性や、五フィート二インチに達する女性は少なかった。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
えーと、5 フィート 7 インチ ≒ 170 cm、5 フィート 2 インチ ≒ 157.5 cm です。そして、イザベラ曰く、下駄を履くと 7.62 cm 背が伸びるのだとか。

しかし、和服を着ているので、ずっと大きく見える。和服はまた、彼らの容姿の欠陥を隠している。やせて、黄色く、それでいて楽しそうな顔付きである。色彩に乏しく、くっきり目立たせる点もない。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.38 より引用)
洋服にはあまり肯定的では無かったイザベラですが、やはりというか、和服姿には肯定的だったようですね。「それでいて楽しそうな顔付きである」というのは、長く続いた江戸幕府による統治が終わり、日々めまぐるしく進歩していく世界に対する期待感のようなものもあったのでしょうか。

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