2018年11月18日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (581) 「シマララギ川・イロナイ川・クッチャナイ川・鴻之舞」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

シマララギ川

suma-rarak-i
石・滑らかである・ところ


紋別の市街地と紋別空港の間に「藻鼈川」(もべつ──)という川が流れています。「モンヘツ」は元々は藻鼈川沿いの地名でしたが、「モンヘツ場所」が移転する際に名前ごと引っ越して現在に至ります(引っ越しの際に名前ごと持っていった例は、他にも「浦河」や「増毛」などがあります)。

シマララギ川は、藻鼈川の中流部で東から合流する支流です。「東西蝦夷山川地理取調図」には「シユマラヽキ」と記されています。

永田地名解には次のように記されていました。

Shuma rarak-i  シュマ ララキ  石滑ル處
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.456 より引用)

ふむふむ。suma-rarak-i で「石・滑らかである・ところ」と考えた……ということでしょうか。川の流れに洗われて滑らかになった岩でもあったのでしょうか。

ただ、地名で rarak というのはかなり珍しいような気がします。「シマララギ」という音からは、suma-ratki-i で「石・ぶら下がる・もの」という風には考えられないかな……と思ったりもします。

イロナイ川

i-ru-o-nay?
アレ・足跡・多くある・川


道道 553 号「上藻別上渚滑停車場線」の起点のすぐ近くに「上モベツ 1 線川」という川(藻鼈川の支流)が流れています(道道 305 号は「万盛橋」でこの川を越えています)。

イロナイ川は、万盛橋の 100 m ほど上流で上モベツ 1 線川に注いでいますから、藻鼈川から見れば「支流の支流」ということになりますね。一応、地理院地図にも河川として記されていますが、河川名は記載されていません。

このイロナイ川ですが、i-ru-o-nay で「アレ・足跡・多くある・川」かなぁ、と思います。「アレ」は言挙げを憚るものを指す指示代名詞で、ru は「足跡」ですから、足跡を見たくない存在としての「アレ」は、おそらくヒグマあたりなんだろうなぁ、と思います。

「あれっ、ru って『路』じゃなかったっけ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ru は本来は「足跡」という意味で、「足跡が連なるもの」が転じて「路」を意味するようになった、とされています。詩的な由来なんですね。

クッチャナイ川

kucha-an-nay
狩小屋・ある・川


藻鼈川沿いを道道 305 号「紋別丸瀬布線」で遡ると「桜橋」という橋があります。ボウリング場が(ry

えー、クッチャナイ川は桜橋の 150 m ほど上流側で藻鼈川に注ぐ西支流の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」にも「クツチヤンナイ」と記されています。

永田地名解には次のように記されていました。

Kuchan nai  クチャン ナイ  獵屋 今ハナシ
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.456 より引用)

「獵」は「猟」の旧字ですから、「獵屋」は「猟小屋」と考えて良さそうでしょうか。確かに「山小屋」あるいは「狩小屋」を意味する kucha という語彙があります。kucha-an-nay で「狩小屋・ある・川」と読み解けそうですね。

なお、同じく「小屋」を意味する語彙で kas というものがありますが、kas が「仮設小屋」を意味するのに対して、kucha は常設の「山小屋」を意味するとされています。kucha は常設の小屋である以上「今はなし」というのはちょっと残念な感じもしますが、何事も栄枯盛衰はつきものですからね……。

鴻之舞(こうのまい)

ku-or-oma-i?
仕掛け弓・のところ・そこに入る・もの(川)


藻鼈川上流部の地名で、金山があったことで有名ですね。永田地名解には次のように記されていました。

Kuonomai  クオノマイ  機弓ヲ置ク處
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.457 より引用)

「機弓」というのは「仕掛け弓」のことで、獲物が足を踏み入れたところに反応して矢が放たれる(多くの場合、矢にはトリカブトなどの毒が塗られている)仕組みです。

山田秀三さんの「北海道の地名」にも、ほぼ同様のことが記されていました。

鴻之舞 こうのまい
 藻鼈川上流の地名。前のころは大金山があって有名な処であった。ク・オマ・イ(ku-oma-i 仕掛弓・ある・処)だったようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.181 より引用)

ku-oma-i で「仕掛け弓・そこにある・ところ」と読めそうですね。

ただ、よく見ると永田地名解では「クオノマイ」となっていて、ku-oma-i では「クオマイ」となるので違いがあります。厄介なことに「東西蝦夷山川地理取調図」にも「ウノマイ」という川の存在が記されています(「クツチヤンナイ」の下流側に記されているので、少々位置関係が怪しいですが)。

漢字表記でも「鴻之舞」とあり、「ノ」の音は外せないような感じがします。となるとありそうなのは ku-or-oma-i で「仕掛け弓・のところ・そこに入る・もの(川)」あたりでしょうか……?

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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