2020年7月19日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (747) 「ポロモイ川・ホロナイ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ポロモイ川

poro-moy
大きな・入江

(典拠あり、類型あり)
洞爺湖の西岸、月浦地区を流れる川の名前です(ウィンザーから見てちょうど東側です)。「ポロモイ」を素直に解釈すると poro-moy で「大きな・入江」となりますが……。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ホロムイ」と描かれていました。また丁巳日誌「報志利辺津日誌」にも次のように記されていました。

此処少しの湾をこヘ
     ホロムイ
大なる岬也。此上雑木少し。此辺底磐石にて凡八尋九尋位も在とかや。廻りて
     ホンノヘツカウシ
     ヲベツカウシ
等小湾有るよし。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.315 より引用)
「オペッカウシ」も道内各所に見られる地名ですが、洞爺湖のオペッカウシは月浦集落の北東にある岬のうち、標高 163 m の小山になっているあたりを指していたようです(明治時代の地形図による)。

「オペッカウシ」について

本題からはそれますが、ちょいと「オペッカウシ」について。知里さんの「──小辞典」には次のように記されていました。

o-pet-ka-us-i オぺッカウシ 川岸が高い岡になって続いている所。[o(尻,陰部)pet(川)ka(上,=岸)usi(につけている)-i(者),──尻(陰部)を川岸に突き出している者]
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.78 より引用)
「オペッカウシ」の近くに川が見当たらないのが少し気になっていたのですが、山田秀三さんによると「山の尾根(山の尻)が川岸に高崖となって出ている処の称である」とのこと(「北海道の地名」p.104)。一例として層雲峡温泉の北側の断崖が挙げられていました。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
そして洞爺湖の「オペッカウシ」がこの場所だと言うのですが……

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
なるほど。規模は全然異なりますが、共通するところもありそうです。

「月浦」=「幌萌」

現在の「ポロモイ川」は月浦集落の南側を流れていますが、元々は「月浦」自体が「幌萌」という名前だったようです。「洞爺湖町月浦運動公園ポロモイスタジアム」というサッカーグラウンド?がある(最近できた?)みたいですね。

ただ、それだと何故「月浦川」と「ポロモイ川」が併存しているのかが謎ですが……。

「角川──」(略──)にも次のように記されていました。

古くは幌萌といい,これはアイヌ語のポロモイで「大きな入江」の意という(虻田町史)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.892 より引用)
ああ、やはり poro-moy で「大きな・入江」と考えて良さそうな感じですね。このあたりはとても「入江」と呼べる地形ではありませんが、moy 自体が「静かな海」と言うニュアンスで語られるものなので、問題とはならないかと思います。

ただ、個人的には poro-muy で「大きな・箕」という解釈も成り立つんじゃないかと考えています。月浦の地形は比較的平坦で、三方を山に囲まれているので、箕のように見えると思うんです。

「箕」の形がピンと来ない方は、チリ取りを想像いただければ当たらずとも遠からずかと……。

ホロナイ川

poro-nay
大きな・川

(典拠あり、類型あり)
洞爺湖町西部を流れて噴火湾に注ぐ川の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ホロナイ」という名前の川が描かれていました。また「初航蝦夷日誌」にも「ホロナイ峠」と「ホロナイ」というポイントの記載がありました。

また永田地名解には次のように記されていました。

Poro nai  ポロ ナイ  大川 虻田ニ於テノ大川ナリ
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.173 より引用)
「虻田に於いての大川なり」……(汗)。まぁ、それほど間違っていないような気もします。ということで、poro-nay で「大きな・川」と考えて良いかと思われます。

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