2020年9月5日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (760) 「ハイタウシュナイ川・ポンナイ川・富志戸川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ハイタウシュナイ川

hay-ta-us-nay
イラクサ・刈る・いつもする・川

(典拠あり、類型あり)

「道の駅マオイの丘公園」の北側を流れる川の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」には、該当しそうな場所に「ハイハイ」という謎の川?が描かれていました。

丁巳日誌「由宇発利日誌」には次のように記されていました。

 先川口を入て少し上りウレロツヘツ、並びてハイタナイ、チライヲツノトロナイ、ハンケツカベツ、ヘンケツカベツ、ヘタヌ、此処二股に成モツカヘツ、シツカヘツと云、其源はユウニノホリの後ろの方より来るとかや。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.197 より引用)

ここでは「ハイタナイ」とあるのが「ハイタウシュナイ川」のことのように思われます。

「ウレロツヘツ」と「ウリロチ」は同一の川を誤認したか、あるいは似て非なる川があったのかは今ひとつ判然としませんが、「東西蝦夷山川地理取調図」を見た限りでは同一の川を誤認した可能性もあるかな、と思われます。

永田地名解には次のように記されていました。

Hai ta ush nai  ハイ タ ウㇱュ ナイ  蕁麻ヲ取ル澤 「ハイ」又「アイ」ト云フ通音ナリ
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.222 より引用)

ということで、hay-ta-us-nay で「イラクサ・刈る・いつもする・川」と考えて良さそうですね。

ポンナイ川

pon-nay?
小さな・川

(? = 典拠未確認、類型多数)

「道の駅マオイの丘公園」の北に道央圏連絡道路(国道 337 号)の「南長沼ランプ」がありますが、「ポンナイ川」はランプから 0.5 km ほど北を流れています。かなり小さな川なので、地理院地図には川としては描かれていません。

道の駅の南に「幌内」という集落があるのですが、かつて同音の「ホロナイ」という川が存在していたことが「東西蝦夷山川地理取調図」から見て取れます。「ホロナイ」は poro-nay だと考えられるため、「ポンナイ川」は「ホロナイ」と対比する形で pon-nay で「小さな・川」と考えるのが自然かと思われます。

「ポンナイ」は永田地名解にも記載が無く、また昔の地形図にも「ポンナイ」という名前が見当たらないので裏付けの取りようが無い……というのが正直なところです(汗)。

富志戸川(ふしこ──)

husko-pet
古い・川

(典拠あり、類型あり)

長沼町の市街地からすこし東に向かったところに「ながぬまコミュニティ公園」という公園があります(昔、夕張鉄道で使用されていた蒸気機関車が静態保存されていたりします)。「富志戸川」は公園の北側を流れていて、「山根川」に合流後、「馬追運河」に合流して西に向かって流れています。

このあたりの川はもともと「マオイ川」の支流で、マオイ川は南に向かって流れて「マオイトー」に注いでいました。馬追沼の干拓や夕張川の新川開削などの治水計画の一環によるものなのか、相当大規模に手を入れたものだな……と思わせます。

「北海道地名誌」には次のように記されていました。

 フシコ 富志戸とも書く。市街地東側,馬追山の山麓地区で,最近長沼ナイキ基地開設に伴う治水ダムが造られたところ。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.261 より引用)

あっ、改めて地形図を眺めてみると、「ながぬまコミュニティ公園」に隣接する池には堰堤がありました。これが「長沼ナイキ基地開設に伴う治水ダム」なんでしょうか。富志戸川には「フシコ第 1 枝川」と「フシコ第 2 枝川」という南支流があり、これらの支流を遡った先に「航空自衛隊長沼分屯基地」があります。

フシコはアイヌ語の古いの意。「フシコペッ」(古川)の後略。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.261 より引用)

やはりそういうことですよね。husko-pet で「古い・川」と読めそうです。このあたりでは面白いことに、マオイトーに注ぐ川が軒並み「──ナイ」なのに対し、山側の支流が「──ヘツ」となっているようです。

どちらかと言えば、本流が「──ヘツ」で支流が「──ナイ」のケースが多いだけに、ちょっと興味深いですね。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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