2020年9月27日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (767) 「シマフルベツ川・カネオペツ川・パンケホロカユウパロ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

シマフルベツ川

suma-hure-pet??
岩・赤い・川

(?? = 典拠なし、類型あり)

夕張シューパロダムのあたりで夕張川と合流する「パンケモユーパロ川」(パンケモウユウパロ川)を遡ると、「開かずの道道」として知られる道道 136 号「夕張新得線」沿いを東に向かうことになります。「シマフルベツ川」(シマプルベツ川)は占冠村との境からそれほど遠くないところでパンケモユーパロ川に注ぐ北支流の名前です。

「シマフルベツ川」と「シマプルベツ川」や、「パンケモユーパロ川」と「パンケモウユウパロ川」のように表記が揺れているところがありますが、前者が地理院地図の川名、後者が国土数値情報の川名です。最近ようやく気づいたのですが、両者に細かな違いがあるケースは少なくないみたいですね。

「シマプルベツ」という川名はかなり謎だったのですが、戦前に作図された陸軍図には「シマフレベツ川」と描かれていました。なるほど、これなら suma-hure-pet で「岩・赤い・川」と読めそうですね。

お隣の占冠村には「赤岩青巖峡」という景勝地がありますが、似たような感じで、褐色の岩が目立つ川だったのだろうなぁ、と思わせます。

カネオペツ川

kane-o-pet?
金・そこにある・川
ka-net-o-pet??
表面・流木・そこにある・川

(? = 典拠あるが疑わしい、類型あり)(?? = 典拠なし、類型あり)

シューパロ湖の北半分は夕張川のダム湖ですが、夕張湖に東から注ぐ「ペンケモユーパロ川」という支流があります。「カネオペツ川」はペンケモユーパロ川の南支流なので、夕張川から見ると「支流の支流」ということに成るでしょうか。

夕張シューパロダムができる前は、ペンケモユーパロ川の北側には田畑が広がっていましたが、今はほぼシューパロ湖に沈んでしまったようです。

「カネオペツ」という川名は古くから存在していたようで、明治時代の地形図にも「カ子オペッ」と描かれていました。

「北海道地名誌」には次のように記されていました。

 カネオベツ川 ペンケモユウパロ川の左小支流。アイヌ語の金(かね)のある川の意であるが,
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.220 より引用)

おっ、ビッグビジネスの予感がしますね! 続きが気になりますが……

この川からは金が出ないという。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.220 より引用)

なんでやねーん!

気を取り直して。kánekáni、あるいは konkane はいずれも「金」あるいは「黄金」を意味する語彙で、和語からの移入語彙と考えられます。kane-o-pet であれば「金・そこにある・川」と読めるのですが、更科さんの調べによると「この川からは金が出ない」とのこと。

同様の例が北見市の「金尾内川」にもありますが、明治時代に砂金の試掘が行われたものの発見されなかった、とのこと。空振りが二件続いたとなると、ちょっと別の方向性で考えないといけないような気がしてきました。

別の方向性で考えてみた

ka は「上」だったり「表面」と言った風に解釈できるかと思います。とすると ka-net-o-pet で「表面・流木・そこにある・川」と解釈できたりしないでしょうか……? 流木と言っても巨木ではなく、焚付に使えそうな細枝の可能性もあるんじゃないかと。

ただ、知里さんの「──小辞典」を見ていたところ、別の捉え方もできそうなことに気づきました。

net, -i ねッ ①漂木;流木。②水面の一角に流木が集結して魚類の隠れ場をなしている所。③イブリ(胆振),ヒダカ(日高)地方で人為的に川の上にさしかけを作って魚をとる仕掛。釧路・北見地方の puy に当る。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.65 より引用)

「人為的に川の上にさしかけを作って魚をとる仕掛」というのは、puy の項によると「桟橋」とのこと。そこまで立派なものがあったかどうかは微妙ですが、先に引用した②のような考え方は十分成り立ちそうな気もします。

ただ、北隣の「白金川」では実際に白金が出たという話もあるとのこと。となるとやっぱり「金・多くある・川」だったんですかねぇ……?(ぉぃ

パンケホロカユウパロ川

panke-horka-{yuparo}
川下側の・U ターンする・{夕張川}

(典拠あり、類型あり)

夕張川の西支流です。「パンケホロカユウパロ川」(パンケポロカユウパロ川)の北には「ペンケホロカユウパロ川」(ペンケポロカユウパロ川)も流れています。

「北海道地名誌」には次のように記されていました。

 パンケホロカユウパロ川 大夕張の奥の右支流。アイヌ語で川下にある後戻りさせられる夕張川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.220 より引用)

はい。panke-horka-{yuparo} で「川下側の・U ターンする・{夕張川}」と考えられそうですね。

それにしても「志幌加別川」「遠幌加別川」があるほか、パンケモユーパロ川の南支流として「ホロカユウパロ川」もあります。夕張川の西支流には「パンケホロカユウパロ川」と「ペンケホロカユウパロ川」があるというのは……ややこしいですよね。特にお役所関係の方が間違えたりしないのか、他人事ながら心配になってしまいます。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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