2020年10月10日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (770) 「トプトエウシナイ川・パンケテシマナイ川・ポンルベシベ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

トプトエウシナイ川

top-tuye-us-nay??
竹・切る・いつもする・川

(?? = 典拠なし、類型あり)

芦別市頭部、国道 38 号の「滝里大橋」のあたりで空知川に注ぐ「大谷川」という川がありますが、トプトエウシナイ川は大谷川の南支流……ということになっています(現在は)。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「トツフエウシナイ」という名前の川が描かれていて、明治時代の地形図には「トプト゚エウシュナイ」という名前で描かれていました。永田地名解にも記載があるか……と思ったのですが、見つけられませんでした。

「トプトエウシナイ」「トツフエウシナイ」「トプト゚エウシュナイ」という記録からは to-putu-e-us-nay で「湖・口・そこで・ついている・川」かな、と思わせます。実際に「滝里湖」の南端(入口)あたりに注ぐ川なのですが……滝里湖は「滝里ダム」によって形成されたダム湖で、当然ながら明治時代には存在しないものです。この解釈は時代考証が完全に破綻していますね(汗)。

となると、ここは top-tuye-us-nay で「竹・切る・いつもする・川」と考えるべきでしょうか。知里さんによると、江丹別川(旭川市)の支流に「イナウニトゥエウシナイ」という川があり、それが inaw-ni-tuye-us-nay だったのではないかとのこと。

樹木を切る場合は ta を使う場合が多いのかな……と思っていましたが、tuye を使う場合もあるのかもしれません。

パンケテシマナイ川

panke-tes-oma-nay?
川下側の・梁(やな)・そこにある・川

(? = 典拠未確認、類型多数)

滝里ダムのダム湖である「滝里湖」の東側、国道 38 号の「秋紅橋」の下を流れる川の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」にはそれらしき名前の川が見当たりませんが、明治時代の地形図には「パンケテシユマ」と「ペンケテシユマ」という名前の川が並んで描かれていました。

現在は、「パンケテシマナイ川」は現存するものの、対になる「ペンケ──」が見当たりません。明治時代の地形図の記録から類推すると、現在「墓地川」と呼ばれている川がかつての「ペンケテシユマ」だった可能性がありそうです。

常呂町(北見市)の常呂川沿いに「手師学」と書いて「てしょまない」と読ませる地名がありました。tes-oma-nay で「梁(やな)・そこにある・川」だったと考えられますが、今回の「パンケテシユマ」「ペンケテシユマ」もほぼ同じ解釈ができそうに思えます。

panke-tes-oma-nay で「川下側の・梁(やな)・そこにある・川」と考えて良いかと思います。人工的な「」があったというよりは、梁のような岩盤があったのでは無いかな、と思われます。

ポンルベシベ川

{pon-mosir}-ru-pes-pe??
{奔茂尻}・道・それに沿って下る・もの(川)

(?? = 典拠なし、類型あり)

道内のあちこちに「ルベシベ」という地名や川があることをご存じの方もいらっしゃるかと思います。そんな方には何を今更、と思われるかもしれませんが……(すいません)。

滝里ダムによって形成されたダム湖である「滝里湖」の北側にある、国道 38 号の「望郷橋」の下を流れる川の名前です。空知川の東支流、ということになりますね。

明治時代の地形図には「ルペシュペ」とだけありました。ru-pes-pe は「道・それに沿って下る・もの(川)」で、一般的には「峠道の川」と解釈できます。それにしても「道・それに沿って下る・もの」というのは持って回った言い回しだなぁ……と思ってしまいますね。

ru-pes-pe は一般名詞的な言い回しなので、当然ながら同名の川が山ほど存在することになります。そのため……あ、折角なので知里さんの「──小辞典」から引用してみましょうか。

ru-pes-pe ルぺㇱペ 山を越えて向う側の土地へ降りて行く路のある川。「ウリン・ルペㇱペ」 Urin-rupes-e と云えば雨龍(ウリェウ)へ越えて行く路のついている沢の義。この種の地名は各地にあり前代の交通路を知るためには重要な手がかりになる。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.111 より引用)

古い記録では「ルペシュペ」だったものが、何故「ポンルベシベ」になったのだろう……と言う疑問が出てきたのですが、ポンルベシベ川が空知川に合流するあたりは「奔茂尻」(ぽんもしり)という地名でした(かつて同名の駅もありましたが、後に「滝里」に改名)。

つまり、この pon-ru-pes-pe は「小さな・道・それに沿って下る・もの(川)」なんですが、そういうことではなくて(一体何を言っているのだ)、「奔茂尻の峠川」と考えるべきなのでしょうね。{pon-mosir}-ru-pes-pe-mosir が省略された……ということかと。

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