2018年7月8日日曜日

次の投稿 › ‹  前の投稿

アイヌ語地名の傾向と対策 (549) 「喜登牛・チセンベツ沢・オコンベツ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

喜登牛(きとうし)

kito-us(-i)
ギョウジャニンニク・多くある(・もの)


足寄町芽登の北、美里別川沿いの地名です。南喜登牛で美里別川に合流する「キトウシ川」という支流が流れているほか、キトウシ川を源流部に遡ると「喜登牛山」があります。広大な足寄町北西部全体が「喜登牛エリア」と言えるのかもしれません。

山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のように記されていました。

キト・ウシ(kito-ush ぎょうじゃにんにく・群生する)の意。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.298 より引用)

はい。ま、そうでしょうね。kito-us-i で「ギョウジャニンニク・多くある・もの」と考えて良さそうです。

どの辺に行者にんにくが多くあったのかと言われると、多分「キトウシ川」沿いのどこかだったのだろうなぁ、と思います。まず川の名前が成立して、そこから山の名前や集落の名前に転用された、と言う経緯が一般的かと思います。

チセンベツ沢

chise-ne-pet?
家・のような・川


喜登牛から美里別川を遡ると、西からヌカナン川(芽登温泉のあるところです)が合流していて、更に美里別川を遡ると東から「ホロカビリベツ川」が合流しています。「ホロカビリベツ川」は「U ターンする美里別川」と考えられますが、確かに源流部まで遡ると東南東から西北西に向かって流れているので、「U ターンしている」と言えそうです。

「チセンベツ沢」(「チセンベツ沢川」とも)はホロカビリベツ川の東支流で、途中で南支流の「チセンベツ小沢川」と合流しています。また、ホロカビリベツ川を更に遡ると西支流として「パンケチセンベツ川」が、その更に上流部では東支流の「ペンケチセンベツ川」が合流しています。「チセンベツ」の名を持つ川が 4 つある、ということになりますね。

「北海道地名誌」には次のように記されていました。

 チセンベツ沢 キトウシ山の西山麓から流れるホロカピリベツ川の左枝川。アイヌ語「チセ・ウン・ペッ」で家のある川の意と思う。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.645 より引用)

これは更科さんの文章っぽい感じでしょうか。chise-un-pet で「家・ある・川」ではないかとの説ですが、若干素直に頷けないところもあります。いや、こんな山中に家があったとは考えづらいというのが全てなんですけどね。

美里別川とヌカナン川の間に「クマネシリ岳」という変わった形の山が聳えています。どのように変わっているかと言うと、てっぺんが平らで弓なりになっているのですね(参考)。

そして、似たような形の山が「チセンベツ沢」の北側(ペンケチセンベツ川の南側)にも聳えています。この山が「チセネシリ」(家のような形の山)と呼ばれていた可能性があるのではないかな、と思ったわけです。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

で、チセネシリから流れる川なので chise-ne-sir-pet と呼ばれるようになり、やがて「山」を意味する sir が略されて chise-ne-pet で「家・のような・川」と呼ばれるようになったのでは……と考えてみました。

オコンベツ川

o-kon(-un)-pet??
河口・(魚の)産卵穴(・ある)・川


美里別川の「ビリベツ取水堰」から 1 km ほど北で合流している西支流の名前です。これはなんだろうなぁーと思っていたのですが、もしかしたら o-kom-pet で「河口・曲がる・川」なんでしょうか。

現在の地形図では、確かに 90 度近く向きを変えてから美里別川に合流しているので、「河口・曲がる・川」という解釈が適切に思えるのですが、昔の地形図ではまっすぐ美里別川に注いでいるように描かれているので、この解も若干怪しいような気もしています。あるいは o-kot-pet で「河口・くぼみ・川」かな、とも思ったのですが、今ひとつしっくり来ない感じがしていました。

さてどうしたものか……と「地名アイヌ語小辞典」を眺めていたところ、こんな語彙があったことに気づきました。

kon, -i こン ①【クシロ,キタミ】サケ・マス以外の魚の掘るホリ。→ichan, rakan, chep-kot. ②綿毛。
知里真志保地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.50 より引用)

あー、もしかしてこれなんでしょうかね。「クシロ,キタミ」じゃ無いじゃないか! というツッコミもあろうかと思いますが、アショロには元々釧路アイヌが住んでいたなんて話もありますから、クシロでいいんです!(無理やり

ということで、o-kon(-un)-pet で「河口・(魚の)産卵穴(・ある)・川」あたりかなぁ……と考えてみたのですが、いかがでしょう?

ちなみに、オコンベツ川が美里別川に合流するあたりの東岸に温泉マークがあるのですが、昔の地図にはそこから 600 m ほど北に「ユーアンペツ」という川が記されています。今も昔も「湯」が出る場所のようですね。

前の記事続きを読む

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International

0 件のコメント:

新着記事