2021年3月27日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (817) 「モサラマン川・シケトシナイ川・オタコムシュベ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

モサラマン川

mo-sar-oma-p?
小さな・葭原・そこに入る・もの(川)

(? = 典拠あるが疑わしい、類型あり)

雄武町東部に「オニシ沼」という名前の海跡湖がありますが、モサラマン川は「オニシ沼」に注ぐ河川のひとつです(もう一つは「御西川」)。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「モサルマフ」という名前の川が描かれていました。明治時代の地形図には「モサラマン」という名前で描かれています。

永田地名解にも記載は見当たりませんが、更科さんの「アイヌ語地名解」に詳らかに記されていました。

 モサラマン
 紋別郡興部町の隣の部落名。正確な行政の字名ではモサラマンオニシということで、御西川の支流から出た地名であることはたしかである。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.299 より引用)

「正確な行政の字名では」としながら「雄武町」が「興部町の隣」となっているあたり、なんとも不思議な感じもしますが……。

更科さんは「モサラマンオニシ」と記していましたが、陸軍図を見た限りでは大正時代の頃から「モサラマン」という表記が一般的だったようです。現在、国道 238 号がモサラマン川を渡っているあたり、あるいは少し北あたりが「モサラマン」の集落に相当します。このあたりの幹線道路の変遷を追うのも面白そうですが、本題から外れるので……。

モサラマンとは小さい方の湿地に行くという意味で、日本的には湿地から流れ出て来るという意味である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.299 より引用)

そうですね。mo-sar-oman で「小さな・葭原・行く」と考えられそうでしょうか。ただ「東西蝦夷──」には「モサルマフ」とあり、これを mo-sar-oma-p で「小さな・葭原・そこに入る・もの(川)」と読むこともできそうです。

どちらかと言えば mo-sar-oma-p のほうがより一般的な形なんじゃないかな、と考えています。

シケトシナイ川

sike-tak-us-nay??
荷物・取りに行く・いつもする・川

(?? = 典拠あるが疑わしい、類型未確認)

「日の出岬」の西を流れる元沢木川と、その更に北西を流れる「オタコムシュベ川」の間を流れる川の名前です。残念ながら地理院地図には川名が描かれていません。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「シケトシナイ」という名前の川が描かれていて、明治時代の地形図にも「シケトチナイ」と描かれています。「再航蝦夷日誌」にも「シケトシナイ」と記されていました。

永田地名解には次のように記されていました。

Shike tochi nai  シケ トチ ナイ  荷ヲ卸ス澤 姥百合ヲ取リ脊負ヒ來リテ此處ニ置キ休ム處
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.447 より引用)

うーむ、これはどう考えれば良いのでしょう。確かに sike は「荷を負う」と解釈できますが……。あ、tori で「逗留する」という意味になるようですので、なるほど sike-tori-nay で「逗留する・滞在する・澤」と考えた、ということでしょう。

ただ、「竹四郎廻浦日記」には「シケトクシナイ」と記録されているので、これだと sike-tori-nay と考えるのは少し厳しくなりそうな気もします。永田地名解の言う「ウバユリを運ぶ際の休憩処」というのはいかにも取ってつけた感があるので一旦忘れるとして、「シケトシナイ」あるいは「シケトクシナイ」をどう考えたものか……。

sik-etok で「目・の前」と解釈できるので、sik-etok-us-nay であれば「目・の前・そこにある・川」になりそうですが、なぜそんな名前にしたかが良くわかりません。

また sike-tak で「荷物・取りに行く」と考えることもできます。これは、「アイヌ語千歳方言辞典」によると次のような仕草を意味するとのこと。

シケタㇰ siketak 【動 1】 山でクマなどを捕った時に、頭と毛皮を先に村に下ろし、後から肉をとりに行く; <sike「荷物」tak「~をとりに行く」。
(中川裕「アイヌ語千歳方言辞典」草風館 p.210 より引用)

あ、これだと永田地名解の内容とも整合性がありそうな感じでしょうか。sike-tak-us-nay で「荷物・取りに行く・いつもする・川」と考えて良いのかもしれません。

オタコムシュベ川

o-tapkop-us-pe
河口・丸山・ついている・もの(川)

(典拠あり、類型あり)

シケトシナイ川の北西を流れる川の名前です(循環参照ですね)。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ヲタツコムシヘ」という名前の川が描かれています。

明治時代の地形図には「オタㇷ゚コㇷ゚ウㇱュペ」という名前の川が描かれていました。この「ウㇱュ」というのは如何にも永田地名解っぽいなぁ……と思っていたのですが、どうやら案の定だったようで。

O tapkop ush be  オ タㇷ゚コㇷ゚ ウㇱュ ベ  小山
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.447 より引用)

またしても知里さんがブチ切れそうな、ざっくりしすぎの解釈が記されていました。o-tapkop-us-pe は「河口・丸山・ついている・もの(川)」と解釈できそうですが、これを「小山」にしちゃうのは、いくら何でもまとめすぎなのでは……(汗)。

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