2026年9月4日金曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1430) 「ニセイパオマナイ川・丹内・クラウンナイ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ニセイパオマナイ川

nisey-pa-oma-nay
断崖・かみて・そこにある・川
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
占冠の市街地から道道 136 号「夕張新得線」の「赤岩トンネル」を抜けた先に交叉点があり、道道 136 号「夕張新得線」がニニウに向かって分岐しています。直進した先は道道 610 号「占冠穂別線」(新ルート)で、「ニセイパオマナイ川」沿いを南に向かうことになります。

『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には占冠村の川が殆ど描かれていないように見えますが、『北海道実測切図』(1895 頃) には「ニセイパオマナイ」と描かれていました。


更科さんの『アイヌ語地名解』(1982) には次のように記されていました。

 ニセイパオマナイ沢
 峡谷のかみてにある沢の意で、鵡川上流の支流。
(更科源蔵『更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解』みやま書房 p.124 より引用)
nisey-pa-oma-nay で「断崖・かみて・そこにある・川」と読めそうですね。更科さんは「ニセイ」を「峡谷」としていますが、『地名アイヌ語小辞典』(1956) には nisey は「断崖」「絶壁」とあります。まぁ似たようなものですが……。

なお『北海道実測切図』には「ニセイパオマナイ」の西に「ニセイノシュケオマナイ」と「ニセイケㇱュオマナイ」が描かれていました。noske は「まんなか」で kes は「末端」なのですが、見事に勢揃いですね……!

丹内(たんない)

tanne-nay
長い・川
(旧地図等に記載あり、既存説、類型多数)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
道道 136 号「夕張新得線」の「赤岩橋」の 2.2 km ほど東の山の頂上付近に「丹内」という三等三角点が存在します(標高 650.6 m)。

道東自動車道は長さ 3,824 m の「占冠トンネル」で難所の「赤岩青巌峡あかいわせいがんきょう」をショートカットしていますが、すぐに次の「タンネナイトンネル」(長さ 814 m)に入ることになります。

「タンネナイトンネル」の次は国設占冠中央スキー場の下を通る「占冠中央トンネル」で、間で「タンネナイ沢川」を横断しています。この「タンネナイ沢川」を遡った先(東側)の山の頂上付近に「丹内」三角点が存在する……ということになります。

なお川の西側には「丹根内」四等三角点と「奥丹根」四等三角点も存在します。

北海道実測切図』(1895 頃) にも「タン子ナイ」と描かれていました。このあたりの鵡川の支流では「双珠別川」が別格ですが、それを除けばそこそこ長い川です。


更科さんの『アイヌ語地名解』(1982) には次のように記されていました。

 タンネナイ沢
 長い川の意か、鵡川上流の支流。
(更科源蔵『更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解』みやま書房 p.124 より引用)
何故か余韻を残した書き方になってますね。『北海道地名誌』(1975) では「アイヌ語で長い川の意」と断定しているのに……。tanne-nay で「長い・川」だったと見て良いかと思われます。

クラウンナイ川

kuma-un-nay??
横山・ある・川
(?? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
JR 石勝線の「鬼峠トンネル」の東側出口付近を流れる川です。道道 136 号「夕張新得線」は「一軒小橋」でこの川を横断しているとのこと。

北海道実測切図』(1895 頃) にも「クラウンナイ」という川が描かれていますが、困ったことにこれは現在「弓立沢川」とされる川のように見えます。


「アマッポをかけて熊をとる沢」?

『占冠村史』には次のように記されています。

クラウンナイ Kuraクーラ unウン naiナイ アマツポをかけて熊をとる沢
 このは桑の木で作つた弓にサビタ矢を使い毒をぬります。
(『占冠村史』勇払郡占冠村役場 p.40 より引用)※ 原文ママ
一見もっともな解のようにも見えますが、手元の辞書類を調べた限りでは kura が「アマッポ」(仕掛け弓)を指すという用例が見当たりませんでした。

なおこの解は「小池一先生の執筆になるもの」だそうですが、「占冠」を「甚だ静かで平和な上流の場所」とした人のようです。これは占冠村の公式見解でもありますが、なるほど村史に書いたのなら「公式見解」ですよね。

弓を置く……?

問題の kura についてですが、赤平に「幌倉川」という川があり、永田地名解 (1891) は poro-kura で「仕掛け弓を置く大川」としていますが、山田秀三さんはこれを ku-rar で「弓を・置く」としたのか……と想定していました。

rar は「潜る」を意味しますが、「押す」「押さえる」を意味する rari という語もあります。ku-rar-un-nay だと文法的に違和感がありますが、ku-rar-us-nay であれば「弓・潜らせる・いつもする・川」となるでしょうか。

「仕掛け弓を仕掛ける木のある川」?

ただ、個人的には「しっくり来ない」というのが正直なところです。可能性のありそうな試案が二つほどあるのですが、一つは「クンナイ」が「クラウンナイ」に誤記・誤読されたという可能性です。kutek-un-nay であれば「仕掛け弓を仕掛ける木・ある・川」となります。

kutek は「鹿追」の旧名「クテクウシ」に出てくる語で、「木で作った低い柵」だと思っていたんですが「仕掛け弓を仕掛ける木」という解釈もアリだったんですね……。まさに瓢箪から駒が出た感じです。

「横山のある川」?

もう一つの案が「クウンナイ」だったのではないか、というものです。kuma は「横棒」(物干し竿のようなもの)を意味する語ですが、地名においては「横山」(横に長い山)を意味します。kuma-un-nay であれば「横山・ある・川」ということになります。

「実測切図」が「クラウンナイ」とした(現在の)「弓立沢川」の東の山が、割と細長い形をしているように見えます。個人的には「クマウンナイ」説を推したいところです。

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