2026年4月19日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1372) 「ピラチシュウスナイ沢・ウエンナイ沢・ニセイパオマナイ沢」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ピラチシュウスナイ沢

pira-kes-us-nay??
崖・末端・ついている・川
(?? = 旧地図等で未確認、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
アッリオシヒナイ沢」の河口から額平川を 1 km と少し遡ったところで東から合流する支流です。流石にこのあたりになると『北海道実測切図』(1895 頃) も実際の地形との乖離が激しくなり、また川名も記入されていません。

川名の記入がないのは『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) も同様で、戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」における額平川筋の聞き書きも「ユクルベシベ」(パンケユックルベシュベ沢か)で終了しています。

こんな状況にもかかわらずアイヌ語由来らしい川名が残っているというのは驚きですね。「ピラチシュウスナイ」を素直に読み解けば pira-chis-us-nay となるでしょうか。pira は「崖」ですが、ここで問題となるのは chis の解釈です。

地名アイヌ語小辞典』(1956) には次のように記されています。

chis ちㇱ《完》泣く。
chis, -i ちㇱ ①立岩。②【ナヨロ】岩石の坊主山;丸い岩山。③中凹み。
知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター p.20 より引用)
「崖がいつも泣く川」というのはちょっと詩的すぎるでしょうか。となると「崖・立岩・そこにある・川」あたりの可能性を考えたくなります。

ただ……おそらく「チシ」は「ケシ」の誤記なんじゃないかと思います。pira-kes-us-nay であれば「崖・末端・ついている・川」となり、実際の地形にもマッチしますし、地名(川名)としても一般的なものになります。「ケ」を「チ」と読み間違える、あるいは書き間違えるというのは良くある話だとも思われるので……。

ウエンナイ沢

wen-nay??
悪い・川
(?? = 旧地図等で未確認、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「ピラチシュウスナイ沢」河口から更に額平川を遡り、幌尻林道(だと思う)の「奥幌尻橋」から 0.6 km ほど遡ったところで南西から額平川に合流しています。

このあたりは『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にも川名の記入が無く、戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」の聞き書きにも言及はありません。また『北海道実測切図』(1895 頃) での描かれ方も不正確なもので、川名の記入もありません。

「ウエンナイ」は wen-nay で「悪い・川」と見ていいかと思われます。「ウエンナイ沢」を遡って分水嶺を越えると「クチャコルシュナイ沢」の流域に出ますが、その南西隣には「ピリカナイ沢」があります。

額平川は「ピリカナイ沢」と「ウエンナイ沢」の間で北に大回りしているので、川を遡る場合は「ピリカナイ沢」と「ウエンナイ沢」を経由してショートカットした可能性もゼロではないかもしれません。だとすれば両者はワンセットでの命名だったのかも……?

ニセイパオマナイ沢

nisey-pa-oma-nay??
峡谷・かみ・そこにある・川
(?? = 旧地図等で未確認、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
額平川の支流では、確認できた限りでは最後のアイヌ語由来の川名でしょうか。幌尻林道(だと思う)の「幌振橋」の近くで北東から額平川に合流する支流です。

地理院地図には「ニセイオマナイ沢」と描かれていますが、国土数値情報では「ニセイオマナイ川」です。地味な違いではありますが、検索する時とかに面倒なんですよね……。

「ニセイパオマナイ」は nisey-pa-oma-nay で「峡谷・かみ・そこにある・川」と読めそうですね。

pakes はどちらも「末端」という印象がありますが、両者は対義語で、『地名アイヌ語小辞典』(1956) によると pa は「かみのはずれ」で kes が「しものはずれ」とのこと。pa には「頭」という含意もあり、同様に kes は「尻」でもあります。

nisey-pa-oma-nay があるのと同様に nisey-kes-oma-nay も(道内のどこかに)あった筈です。両者の違いについて思いを巡らせるのも面白いかもしれません。

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