2026年4月26日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1375) 「タウシナイ川・トウナイ川・モルベシベ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

タウシナイ川

tay-us-nay?
林・ついている・川
(? = 旧地図等に記載あるが位置に疑問あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
トプシュナイ川」の北東隣を流れる川で、南東から沙流川に合流しています。『北海道実測切図』(1895 頃) には「タイウㇱュナイ」と描かれています。


東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「タユンナイ」という川が描かれています。ただこの川は「ハンケトフシナイ」(=トプシュナイ川?)よりも海側に描かれているので、位置関係に若干の疑問が残ります。


戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

また少し上りし処
     タユシナイ
同じく東岸に当る。椴原有るよりして号る也。此辺東岸山麓に成り、西岸平地多し。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.55 より引用)
このあたりは妙に「タユシナイ」あるいは「タユンナイ」という川が多い印象があります。偶然なのか、それとも認識に齟齬があって同じ川が別の場所に記録されてしまったのかは不明ですが……。

とりあえず「タウシナイ川」は tay-us-nay で「林・ついている・川」と見て良いかと思われます。

トウナイ川

tunnay?
谷川
(? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
沙流川の北支流で、「タウシナイ川」の北東、長知内橋と幌毛志橋の間あたりを北から南に向かって流れています。『北海道実測切図』(1895 頃) には「トーナイ」と描かれています。


不思議なことに『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が見当たりませんが、戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

また少し上りて五丁
     ト ナ イ
西岸相応の川也。其名義はしれざれども、昔し此処に金持の爺が一人住し居た処、疱瘡流(行)して子供を皆なくし、只一人ヤエチシハレハレと云て泣て居たと云事のよし也。よつて泣しと云トナイ(原注)といへり。是また解せず。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.55 より引用)※ 原文ママ
これは……何でしょう?(汗) 「トナイ」という言い回しが「泣く」を意味するようにも取れますが、手元の資料を当たってみた限りではそういった意味は確認できませんでした。

「トナイ」あるいは「トウナイ」を素直に解釈すると to-nay で「沼・川」という可能性が考えられますが、立地を考えるとむしろ tunnay で「谷川」でしょうか。

あとは tu-nay で「二つの・川」という可能性もあると言えばあるでしょう。「トウナイ川」は途中で二手(あるいはそれ以上)に分かれているので、この可能性も捨てきれないなぁ……と。

モルベシベ川

mo-ru-pes-pe
小さな・路・それに沿って下がる・もの(川)
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
タウシナイ川の東、トウナイ川河口のすぐ東で南東から沙流川に合流する支流です。『北海道実測切図』(1895 頃) には「モルペㇱュペ」と描かれていますが、不思議なことに『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川名が見当たりません。


戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

しばし過て
     モルベシベ
東岸小川有。此辺ホロサル村の畑多し。小さき山越道と云、是ニヨイ越の道の川すじ也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.56 より引用)
「ニヨイ」は「ニオイ」のことですが、かつての「ニヨイ」は現在の平取荷負よりも東に位置していました(現在「荷負本村生活館」のあるあたり)。

「モルベシベ」は mo-ru-pes-pe で「小さな・路・それに沿って下がる・もの(川)」と見て良さそうですね。何故 mo-(小さな)を冠しているのかは少々謎ですが、むかわ町穂別和泉(富内線豊田駅の近く)と平取町長知内の間(鵡川側)に「累標」があったので、何らかの関連があるかもしれませんし、関係ないかもしれません(どっちだ)。

「累標」については山田秀三アイヌ語地名の研究 2』p.323 にも詳細が記されています。

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