(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
双珠別川(そうしゅべつがわ)
so-us-pet
滝・ついている・川
滝・ついている・川
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
占冠の市街地の南西、国設占冠中央スキー場の北で東から鵡川に合流する支流です。鵡川の支流では「穂別川」とともに群を抜いた存在ですが、どちらが流域面積が広いのかは確認できませんでした。『北海道実測切図』(1895 頃) には「ソーウㇱュペッ」と描かれています。
山田秀三さんは『北海道の地名』(1994) にて次のように記していました。
ソー・ウㇱ・ペッ(滝が・ついている・川)と読まれるが,5 万分図には滝の印がない。
(山田秀三『北海道の地名』草風館 p.373 より引用)
ただ、山田さんは占冠のとあるお宅で「双珠別の滝」の写真を見かけたので、道庁河川課編の 5 万分河川図を見たところ……川筋の支流がこの川に入る処に滝が多く,一番滝から五番滝までずらっと並んでいた。
(山田秀三『北海道の地名』草風館 p.373 より引用)
とのこと。へぇ~と思って地理院地図を開いてみたところ、「二番滝川」「三番滝川」と、少し離れたところに「五番滝沢川」が見つかったものの、「一番滝」と「四番滝」については確認できませんでした。知里博士なら so-ush-pet(滝が・たくさんある・川)と訳されるであろう。
(山田秀三『北海道の地名』草風館 p.373 より引用)
そう解釈することもできそうですね。今日のところはとりあえず無難に so-us-pet で「滝・ついている・川」としておこうと思います。ニニップナイ沢川
ninuy-pe-nay??
枕する・もの・川
枕する・もの・川
(?? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
道東道の「占冠 IC」の南東で双珠別川に合流する支流です。『北海道実測切図』(1895 頃) には、不思議なことに「シルクルポクオマナイ」と描かれているように見えます。「シルクルポクオマナイ」は sir-kur-pok-oma-nay で「山・影・下・そこにある・川」でしょうか。この川は険しい山に挟まれているように見えるので、妥当性がありそうなネーミングに思えます。
「ニニップナイ」とは
問題は「ニニップナイ」で、「ニニツプナイ」と描かれた戦前の地図が存在するようです。ni は「木」で nip は「柄」を意味するとされます。「がら」とは何……という疑問が出てきますが、この場合は「つか」と読むべきでしょう。「刀剣や弓などのにぎる部分」という意味です。また ni-pu で「林・倉」を意味します。ただ、この ni- は「木」のことなので、ni-ni-pu は「木・林・倉」と言ったニュアンスになってしまいます。本来は pu だけで「倉」を意味するので、ni-ni-pu というのはいくらなんでも盛りすぎのようにも思えます。
nup は「野原」や「原野」を意味します。ni-nup であれば「木・原野」と言った意味になりそうですが、それだったら素直に tay で「林」と呼んでも良さそうな気もします。
横に「とがった山」
また nit は「串」を意味します。とんがった岩(山)を imanit(魚焼串)と呼んで、オキクルミやサマイクルがこの岩(山)に魚を刺して焼いて食べた……と言った伝説が道内のあちこちで語られていたりします。直近だと「ニニウ」も niti じゃないか……と思ったりしています。ニニップナイ沢川の東西にはかなり「とがった形」の山が並んでいますが、これは「串」と言うよりは kuma(横棒、横山)と呼ぶほうが相応しいようにも思えます。更に言えば「とがった山」を改めて ni-nit で「木の串」と呼ぶのも奇妙な感じもします。
「枕するものの川」?
これは……きっと何かを見落としています。おそらく自分の知らない語彙を見落としているのでしょう。ということで手元の辞書類を漁ってみたところ、ninuy で「枕する」という語があるとのこと。名詞としての「枕」は aeninuype で、これは a=e-ninuy-pe で「我々が(人が)・それで・枕する・もの」と分解できるとのこと。また eninuype という言い方もあるようですが、残念ながら ninuype という用例?は見つけられていません。
『釧路地方のアイヌ語語彙集』には ciennuype で「枕」を意味するとあり、「特に箱枕のこと」とあります。改めて地形図を見てみると、「ニニップナイ沢川」は双珠別川から 1.2 km ほど西に向かい、そこで急に南に向きを変えているように見えます(双珠別川から遡る場合)。
「ニニップナイ沢川」の東には「双珠別」四等三角点(標高 577.6 m)のある山がありますが、これを「箱枕」に見立てた……という可能性は考えられないでしょうか。ninuy-pe-nay で「枕する・もの・川」という想定です。
もともと「シルクルポクオマナイ」という川名があったのに何故……という疑問も出てきますが、川の東の山を ninuy-pe(枕するもの)と呼ぶ流儀があり、「枕のところの川」という符丁がメジャーになった……といった可能性も考えてみたくなります。
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