2019年8月11日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (651) 「イナリマップ沢川・折真布川・沖内」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

イナリマップ沢川

ninar-oma-p
川岸の平地・そこに入る・もの(川)


小平町を流れる「小平蕊川」の北支流の名前です。イナリマップ沢川の支流として「コイナリマップ沢川」もあります。どことなく「コアップガラナ」を彷彿と(させません)。

お稲荷さんのある川だったらどうしよう……と思ったのですが、明治時代の地形図には「ニナラオマプ」と記されていることに気づきました。なんだ、これだったら意味は明瞭ですね。ninar-oma-p で「川岸の平地・そこに入る・もの(川)」と解釈できそうです。

折真布川(おりまっぷ)

o-rer-oma-p??
河口・山かげ・そこにある・もの(川)


小平町本郷の西で小平蕊川に合流している南支流の名前です。小平蕊川の支流の中では規模の大きいもので、上流に遡って中幌峠を越えると留萌市幌糠に出ることができます。

「東西蝦夷山川地理取調図」には該当しそうな川を見つけられませんでしたが、明治時代の地形図には「オレレマㇷ゚」という川が描かれていました。また、「西蝦夷日誌」にも次のように記されていました。

上りてヲレロマツプ(右)、トヲフツコル(左)、ヲヤシヤシヤウシ(左)、此邊より澤狹く、樹木多く、曲屈す。
松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.255 より引用)

ここにある「ヲレロマツプ」が、現在の「折真布川」のことと考えられそうです。

不思議なことに、折真布川はそれなりの規模の川で、また「西蝦夷日誌」や「竹四郎廻浦日記」に記載があるにもかかわらず、「東西蝦夷山川地理取調図」や「北海道蝦夷語地名解」(永田地名解)に記載が見当たりません。

おそらくは違う名前で記録されているのだと思いますが、どのような名前で記録されているのかは良くわかりません。「オンネ サラ」(東西蝦夷山川地理取調図)あるいは「ヲン子サラ」(北海道蝦夷語地名解)が位置的・順序的には近そうに思えますが……。

「ヲレロマップ」を逐語的に解釈すると、or-oma-p で「中・そこに入る・もの(川)」か、あるいは o-ru-oma-p で「そこに・道・ある・もの(川)」あたりでしょうか。問題点としては、どちらも「ヲレロマップ」よりも「オロマップ」に聞こえてしまうところです。

「ヲレロマップ」に最も近い形を考えるなら、o-rer-oma-p で「河口・山かげ・そこにある・もの(川)」あたりでしょうか。折真布川の河口(小平蕊川との合流点)は若干西偏しているので、小平町桑園のあたりから見た場合、河口は山の向こう側に存在することになります。

……いや、論拠としては弱すぎますし、むしろお隣の沖内川のほうが「河口が山向こうにある」と呼ぶに相応しかったりするんですよね(汗)。

沖内(おきない)

o-u-kot-nay??
河口・互いに・くっついている・川


小平町本郷から小平蕊川を東に遡ると、大きく S 字状に蛇行するところがあります。沖内は S 字カーブの東側の地名です。

同名の川もあり、沖内の集落の東側で南からやってきた「沖内川」と、東からやってきた「ポン沖内川」が合流しています。両河川は合流してから 8~900 m ほどで、小平蕊川に注いでいます。

明治時代の地形図を見ると、現在「沖内川」と呼ばれる川に「ポロオキナイ」と記されていて、現在「ポン沖内川」と呼ばれる川に「オキナイ」と記されています。全く異なる方向から流れてきた二つの河川が合流してから、ほどなく本流に合流するというのは特徴的な地形に思えますが、「東西蝦夷山川地理取調図」にはそれらしき川の存在を確認することができません。

河口にほど近いところで合流する川のことは「交尾する川」と呼ばれますが、沖内川も「交尾する川」と呼ぶに相応しい特徴を兼ね備えているように思えます。ということで o-u-kot-nay で「河口・互いに・くっついている・川」すなわち「オウコッナイ」がやがて「オキナイ」になったのではないか、という可能性を考えてみました。

o-u-kot は「河口・互いに・くっついている」ですが、o は「陰部」とも捉えられるので、「陰部・互いに・くっついている」=「交尾する」と読めます。

ただ、「オウコッナイ」が「オキナイ」になったというのも多少強引な感じもするので、あるいは元は o-kiraw-un-nay で「河口・角・ある・川」あたりで、中略を続けて「オキナイ」になった……という可能性も(僅かながら)あるかもしれません。

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