2020年4月4日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (716) 「茶津・ビヤノ岬」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

茶津(ちゃつ)

chasi-nay
砦・川

(典拠あり、類型多数)

積丹町の美国漁港の北西には、あたかも天然の防波堤のような形をした「黄金岬」という岬があります。茶津は黄金岬の尾根を越えた先のあたりの地名です。全く同じ字の「茶津町」という地名が室蘭市にもありますね。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「チヤシナイ」と「チヤラシナイ」という川名?が並んで記載されています。

「竹四郎廻浦日記」には次のように記されていました。

     ヒ シ ヤ 大岩
     イ子セウシ 〃
     ヲカラセナイ 小澗
     キツトナイ 小川
     滝 の 下 滝
此辺惣て海岸道なし。依てホロムイより此処迄山道切開べし。前に大黒島と云有。廻り弐丁、丸き山にて、上に樹木多し。其内に船を懸るなり。並びてチヤシナイに出る。
     チヤシナイ
チヤツナイと訛る。山道も則此処へ下る。二八出稼多し。
松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.402 より引用)

あー、もしかして……と思ったのですが、やはり「チヤツ」は「チャシ」の訛り……というか誤記だった可能性が高そうですね。ここにある「大黒島」は、現在は「宝島」と呼ばれている島のことだと思われます。

「西蝦夷日誌」にもダメ押しになりそうな記載がありました。

(五町廿間)チヤシナイ(小川)城跡の澤の義(番や一棟、辨天社有)。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.146 より引用)

はい。chasi-nay で「砦・川」だったと見て良いかと思います。「城跡」だと chasi-kot ではないかと考えたくなりますが、知里さんの「──小辞典」には次のように記されていました。

chási-kot, -i ちゃシコッ 砦の跡。──その他に古く山頂にあった古代の祭場の跡,ストーンサークルの跡なども云う。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.15 より引用)

美国にあったチャシの跡は、そこまで古そうなものでは無かった、ということかもしれませんね。

ビヤノ岬

pis-ya-not???
浜・陸・岬

(??? = 典拠なし、類型未確認)

黄金岬の北西、茶津からだと北北西のあたりに位置する岬の名前です。「北海道地名誌」に記載がありましたので、見てみましょうか。

 ビヤノ岬 (~さき) 茶津の北の岬。「ピヤ」はアイヌ語で石丘の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.202 より引用)

ふむ。pi-ya で「石・陸」と解釈したということでしょうか。ただ、改めて「東西蝦夷山川地理取調図」を眺めてみると、「ビヤノ岬」と思しき場所には「ヒシヤ」と描かれています。また「竹四郎廻浦日記」にも「ヒシヤ」とあったことにお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。

「ヒシヤ」であれば pis-ya で「浜・陸」と解釈できそうな気もします。「海側にせり出した陸地」と言った感じでしょうか。

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