2019年1月13日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (597) 「風連・忠烈布川・初茶志内川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

風連(ふうれん)

hure-pet
赤い・川


JR 宗谷本線の名寄駅から 2 駅南に「風連駅」という駅があります。かつては「風連町」という自治体もありましたが、2006 年に名寄市と合併してしまいました。

駅名ですので、まずは「北海道駅名の起源」を見ておきましょう。

  風 連(ふうれん)
所在地 (天塩国) 上川郡風連町
開 駅 明治 36 年 9 月 3 日(北海道鉄道部)
起 源 アイヌ語の「フレ・ペッ」(赤い川)から出たものである。天塩川の支流の小川が酸化鉄を含んで底や両岸が、赤くさびたように見えるからである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.175 より引用)

風連駅と名寄駅の間に「東風連駅」があるのですが、東風連駅の近くを「風連別川」が流れています(国道 40 号と宗谷本線が近づくあたりです)。この川が hure-pet で「赤い・川」だったことから、町の名前になった……ということだと思われます。

迷いようの無い、ともすれば「簡単な」解ですが、たまにはこんなのもいいですよね。

忠烈布川(ちゅうれっぷ──)

chiurup-korpa-nay?
あさり・持つ・川


風連別川の東支流の名前です。いかにもアイヌ語由来っぽい雰囲気がプンプンする川名ですね。

山田秀三さんの旧著「北海道の川の名」には次のように記されていました。

忠烈布川
 風連別川の東側の小流。明治の測量図には、チュレップコパナイとあり、松浦図にチウシコハーとあるのも、位置が少し変であるがこの川のことだったらしい。
(山田秀三「北海道の川の名」モレウ・ライブラリー p.69 より引用)

チウシコハー……。もはやアイヌ語にすら思えない謎な語感ですが、続きを見ておきましょう。

 もう少し旧名の正確な形がつきとめれないと、解をつけるのは危険に思われる。chiu(波)に関係がありそうであるが、後がつけれない。
(山田秀三「北海道の川の名」モレウ・ライブラリー p.69 より引用)

ですよねー。では、続いて丁巳日誌「天之穂日誌」を見てみましょう。

 此川少し上りてチウシコハー、しばし行てサンケフウレブ、此処二股にて左りの方シーフウレツフと云よし。鱒・鯇・桃花魚多しと。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.104 より引用)

またしてもチウシコハー……(汗)。いや、同じものを指しているので当然なんですが、何なんでしょうこの脱力感は……。

更科さんも、山田さんと同じく明治 30 年の 5 万分の 1 図にある「チュレップコパナイ」を元になんとか解釈を組み立てようとしていましたが……

これによるチュは水の流れのことであり、レップは川の流れの真中を意味するが、コパがどうも不明である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.165 より引用)

ふむふむ。やはり chiw(波、水流)に関係するのではないか、と考えたのですね。rep は「沖、海の向こう」と考えられますが、転じて「囲炉裏の真ん中のほう」という意味もあるのだとか。そして「コパ」は、やはり良くわからないようですね。風水とかその辺ですかね(たぶん違う)。

途中の川水がなくなって川尻で再び流れが現われる川をさすのではないかと思うが、はっきりはいえない。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.165 より引用)

うーん……ちょっと良くわからないですね。

更科さんの考えたように chiw-rep で「水流・真ん中」だとすると、後に続く「コパ」をどう解釈したものか悩ましいですが、chiw-rep ではなく chiurup で「あさり」だとしたら、chiurup-korpa-nay で「あさり・持つ・川」と考えられないでしょうか?

最後に残るのが「チウシコハー」ですが、「シ」が「レ」の誤記だった……と考えるくらいしか無いような気が。それにしても「チウシコハー」の脱力感は凄いですよね……。

初茶志内川(はっちゃしない──)

hat-cha-us-nay
山ブドウ・摘む・いつもする・川


天塩川にかかる「曙橋」を渡って道道 798 号「西風連名寄線」で西に向かった先に「弥生」という集落があります。かつては JR 深名線の「天塩弥生駅」のあったところで、最近、同名の民宿がオープンして話題になっていましたね。

ということで(あれ?)「北海道駅名の起源」を見てみましょう。

  天塩弥生(てしおやよい)
所在地 名寄市
開 駅 昭和 12 年 11 月 10 日(客)
起 源 もと付近を流れる初茶志内川にちなんで「初茶志内(はっちやしない)」といった。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.115 より引用)

……ということでして(予めチェックしてたよね絶対)。

えー、続きを見ておきましょうか。

これはアイヌ語の「ハッ・チヤ・ウシナイ」(いつもそこで山ブドウをとる沢) の意である。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.115 より引用)

ああ、なるほど。hat-cha-us-nay で「山ブドウ・摘む・いつもする・川」と考えれば良さそうですね。丁巳日誌「天之穂日誌」には「マツシヤシ」と書いてあったので、ここから入っていたら大いに悩むところでした。

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