2018年6月10日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (541) 「古舞・糠内・恩根内川・メン川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

古舞(ふるまい)

hur-ka-oma-p?
丘・かみ・そこに入る・もの


幕別町の西部、帯広市愛国にほど近いあたりの地名です。途別川の支流の「古舞川」が近くを流れています。

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」には、次のように記されていました。

 古舞(ふるまい)
 幕別町の字名。もと上途別などといったところ、アイヌ語でフルコマップといった川の訛ったもので、
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.234 より引用)

ふむふむ。ここまでは納得です。

丘にある川の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.234-235 より引用)

えっ……? これだと hur-oma-p(丘・そこに入る・もの)になってしまいそうな気がします。

続いて久々に「角川──」(略──)を見てみましょうか。

地名の由来は,中央をフルコマップ川が流れることによるが,この川名はアイヌ語のフル・コマ・プ(丘・曲る・ものの意)によると思われる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1311 より引用)

えっ……? 「コマ」を kom(曲がる)と解釈したのでしょうが、それだと hur-kom-p になりそうな気もしますし、地名だと kom-ke で「曲がっている」とする場合のほうが多いような気もします。

ここは素直に hur-ka-oma-p で「丘・かみ・そこに入る・もの」と考えればいいと思うのですが、いかがでしょうか。

糠内(ぬかない)

noka-an-nay?
形像・ある・川


幕別町の東部を流れる「猿別川」中流部の地名です。猿別川の支流として「糠内川」も流れています。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ヲカナイ」という名が見えますが、おそらく「ヌカナイ」の誤記なのでしょうね。

永田地名解には次のように記されていました。

Nukan nai  ヌカン ナイ  小石川 「ヌカン」ハ細小ノ義取テ小石ノ義ニ用フ北見國宗谷郡ニ同名同義ノ川アリ松浦地圖「ヲカナイ」ニ誤ル
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.306 より引用)

やはり「ヲカナイ」は誤記である可能性が高そうな感じです。そして「ヌカン」は「細く小さいという意味」だとありますが、nukan の原型と考えられる nukar は「見る」「読む」「会う」という意味で、「細く小さい」とは解釈できそうにありません。さてどうしたものか……。

上士幌に「糠平」というところがありますが(温泉で有名ですね)、「糠平」は noka-pira で「形像・崖」という意味でした。似たような感じでなにかの形をした岩(石?)があって、noka-an-nay で「形像・ある・川」と呼んだ……とかじゃないのでしょうか?

恩根内川(おんねない──)

onne-nay
大きな・川


糠内から猿別川を下った先で合流している西支流の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ヲン子ナイ」とあります。

わざわざ引用するまでもありませんが、永田地名解には次のように記されていました。

Onne nai  オンネ ナイ  大川 支流中ノ大川
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.306 より引用)

はい。onne-nay で「大きな・川」ではないか、とのことですね。onne は元々は「老いた」という意味で、そこから「親である」ゆえに「大きい」という論法が成り立つとされています。もう少し北側を流れる「茂発谷川」は規模として別格ですが、茂発谷川を除けば確かに割と大きい支流と言えるのかもしれません。

あと、この「恩根内川」は、規模の割には上流部で幾重にも分かれているように見えます。子(支流)や孫(支流)が多いから onne なのだ、とも考えられるかもしれませんね。

メン川

mem
泉池


幕別町北部、札内の市街地の北側を流れる川の名前です。

戊午日誌「東部登加留宇知之誌」には「シロトウメム」という川?があるように記されています(「シロトウ」は「白人」のことと考えられます)。これは素直に mem で「泉池」と考えて良いのではないでしょうか。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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