2019年3月17日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (615) 「オサナンケップ川・トクポク川・沖里河山」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

オサナンケップ川

o-sar-nanke-p?
河口・葭原・削る・もの


石狩川の北支流で、納内(おさむない)の集落の南側を流れています。「オサナイケップ川」と表記される場合もあるようですが、「東西蝦夷山川地理取調図」では「ヲサナンゲ」とあり、また古い地形図でも「オサナンケプ」とあるので、「オサナイケップ」は「納内」に引きずられた誤記と考えられそうです。

永田地名解には次のように記されていました。

O sa nangep  オ サ ナンゲㇷ゚  川尻ニテ葭ヲ刈ル處 吥坭川ナリ「」ハ「サラ」ノ略言葭ノ義
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.61 より引用)

「吥坭」は「やち」と読みます。俗に「谷地」と呼ばれるものの事ですが、東日本では通用しても西日本では意味が通じにくいかもしれませんね。この場合は「湿地状の川」と言ったあたりでしょうか。

以前(8 年も前)に「納内」という地名について調べたことがあったのですが、当時は nangep の意味が理解できず、相当頓珍漢なことを記していました(汗)。その後 nanke で「削る」という意味の語彙があるらしいことがわかったので、今は素直に o-sar-nanke-p で「河口・葭原・削る・もの」ではないかなぁ、と思っています。

知里さんの「アイヌ語入門」に「rn の前に来れば,それに引かれて n になる」とあります。よって o-sar-nanke-po-san-nanke-p と発音されることとなり、「オサナンケㇷ゚」になる……ということになります。

トクポク川

tuk-pok
小さな隆起・下


オサナンケップ川の北支流の名前……なんですが、ちょっと困ったことが。実は、古い地形図を見ると、現在の「音江川」の下流部分に相当する(一部流路変更の形跡あり)川の名前として記されています。当時(明治時代?)は石狩川の南岸を流れる川として認識されていたものが、いつの間にか石狩川の北岸を流れる「オサナンケップ川」の支流の名前になってしまったようです。

永田地名解には次のように記されていますが、これは石狩川南岸を流れる「トクポク川」のことなので、その点にご注意ください。

Tuk pok  ト゚ㇰ ポㇰ  隆起ノ山下 「オトイエポク」ノ分流ニシテ流ノ變スル毎ニ舊流ノ跡ハ隆起シテ陸地ヲ成ス故ニ名ク
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.66 より引用)

なんか分かったような、それでいて良く分からないようなことが記されていますが……(汗)。これは多分「自然堤防」のことなんでしょうね。tuk は一般的には「小さな隆起」を意味しますが、なるほど「自然堤防」もその一種と言えるのかもしれません。

tuk-pok で「小さな隆起・下」と考えていいのかな、と思います。

沖里河山(おきりか──)

o-kirikap?
河口・鮭の産卵場


深川市南部の山の名前で、1980 年代の土地利用図には西麓の待合川沿いに「沖里河温泉」の存在も記されています。待合川の西隣を「オキリカップ川支流川」が流れていて、その更に西に(現在の本流と目される)「オキリカップ川」が流れています。

永田地名解には、次のように記されていました。

O kirikap  オ キリカㇷ゚  川尻ナル鮭卵場 「」ハ川尻、「キリカ」ハ「イチヤン」ト同義ニテ掻キマゼル義鮭ノ沙ヲ掻キマゼテ産卵スル處樺戸監獄署沖里河派出所ト標示シタル處
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.67 より引用)

せたな町北部に「切梶川」という川が流れているのですが、そこと同系の地名のようです。o-kirikap で「河口・鮭の産卵場」と解釈すれば良いでしょうか。

kirika あるいは kirikatci が「鮭の産卵場」であるという記載は、手元の資料を見た限りでは永田地名解以外には見当たりません。かと言って他に適当な解釈があるわけでもないので(しかもオキリカップ川のあたりは ichan が非常に多い)、謎の多い永田説を追認するしか無さそうな感じです。

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