2019年3月2日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (610) 「ペーパン川・忍路川・近文内川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ペーパン川

pe-pan-pet
水・甘い・川


石狩川の南支流で、旭川の市街地のほぼ真ん中を流れる「牛朱別川」という川がありますが、ペーパン川は JR 石北本線・北日ノ出駅の北あたりで牛朱別川に合流する南支流の名前です。

なお、現在の牛朱別川は「永山新川」で石狩川に注ぐように大幅な改修が行われているため、市内の中心部を流れる「牛朱別川」の水の大半はペーパン川流域のものです。

ペーパン側は、旭山公園のある「旭山」の東側を流れています。川の名前はカタカナで「ペーパン」ですが、源流部にある標高 919.9 m の山の名前は「米飯山」で、これを「ぺいぱん──」と読ませています。

永田地名解には次のように記されていました。

Pe pan  ペ パン  飮水 「」ハ水「パン」ハ飮ム義、「パンワㇰカ」ト云ウニ同ジ北見國標津郡ニテハ「ペパウナ」ト云フ
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.50 より引用)

「『パン』ハ飲ム義」とありますが、手元の辞書類を調べた限りでは「薄い」という意味はあっても「飲む」という用法は見当たらないようです。ただ、この解は「飲む」という解釈に疑義はあるものの、大枠では肯定的に捉えられているようで、知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」にも次のように記されていました。

 ペーパン(Pépan)「ペーパンペツ」(Pé-pan-pet「水・あまい・川」)の下略か。
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.329 より引用)

実際のところ、pan に「甘い」という意味があるかと言われると、同様に辞書類に記載を見つけることができていないのですが、「(味が)薄い」が転じて「甘い」と解釈されたと考えるべきでしょうか。pe-pan-pet で「水・甘い・川」と考えるしか無さそうな感じですが、他の川の水と比べて何らかの違いがあった、ということなのでしょうね。

忍路川(おしょろ──?)

esoro?
それにそって下る


東旭川町米原のあたりでペーパン川に合流する北支流の名前です。小樽に同名の「忍路」があり、知名度は圧倒的に小樽のほうが上なのですが、東旭川にもひっそりと同名の川が流れていました。かつては旭山の東側までペーパン川の北側を並流していて、当時は「ペパンオン子ナイ」と呼ばれていたようです。

知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」には次のように記されていました。

 ペーパンオンネナイ(Pépan-onne-nai「ペーパン川の・老いたる・川」)ペーパン川の左の枝川。この名称はこれがもと本流と考えられていたことを示す
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.331 より引用)

ふむふむ。と思ったのですが次にこんなことも記されていました。

 オンネナイ(Onne-nai「老いたる・川」)ペーパン川の右の枝川。この名称はこれがもと本流と考えられたことを示す。
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.331 より引用)

この「オンネナイ」は現在の「下南部川」のことですが、思わず「どっちやねーん!」とツッコみたくなりますね。

肝心の「忍路」の意味については情報が不足していますが、地形的な特徴から考えるとおそらく esoro で「それにそって下る」なんでしょうね(後ろに -pet-nay のどちらかがついていたと思われます)。現在も道道 486 号「豊田当麻線」が通っていて、峠道として活用されています。

近文内川(ちかぶんない──?)

chikap-un-nay
鳥・いる・川


牛朱別川(永山新川に流れるほう)の南支流の名前で、東旭川町東桜岡のあたりを流れています。近文と言えば知里幸恵が一時期身を寄せていたことでも知られるコタンとして有名ですが、近文内川は近文からは随分と離れたところを流れています。

知里幸恵さんの弟である知里真志保さんの「上川郡アイヌ語地名解」には、次のように記されていました。

 チカプンナイ(Chikap-un-nai「鳥・入る・沢」)
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.330 より引用)

ああ、やはりここも「近文」と同じだったようで、chikap-un-nay で「鳥・いる・川」だったようです。

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