(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
鬼岸辺川(おにけしぺがわ)
o-nipes-pet?
河口・シナノキの内皮・川
河口・シナノキの内皮・川
(? = 旧地図等に記載あり、既存説に疑問あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
厚真川に東から合流する支流です。国土数値情報では何故か「オニキシベ川」となっているほか、1980 年代の土地利用図では「オニケシペ川」となっていました。下流は「厚幌ダム」のダム湖の一部となっていて、道道 235 号「上幌内早来停車場線」は「オニキシベ橋」でオニキシベ川(ダム湖)を横断しています。鬼岸辺川の南(マッカウス川を遡った先)には「鬼岸辺」という名前の四等三角点が存在しますが、現時点では「成果不良点」とのこと。厚真町には成果不良の三角点が著しく多く、これは厚幌ダムの建設に伴うものかもしれませんが、それにしても成果不良点が多すぎるような……。
『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「ラマシケヘ」という川が描かれていました。「ラマシケヘ」と「オニキシベ」は色々と間違えまくっていますが……
戊午日誌 (1859-1863) 「安都摩日誌」には次のように記されていました。
また少し上に
ヲニケレベ
右の方同じく小沢也。此川すじ榀皮多く有るよし。よつて号とかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中』北海道出版企画センター p.477 より引用)※ 原文ママ
カタカナの「ヲ」と「ラ」を間違えたり、また「シ」と「レ」を間違えるのは定番中の定番ということが良くわかりますね(汗)。頭註には「しなの木の皮」「ヲンクケルケプ」と記されていました。知里さんの『植物編』(1976) には kukerkep で「シナノキの内皮」を意味するとあり、on-kukerkep は「(うるかして)よれよれになった・シナノキの繊維」を意味するとのこと。地名解としては、あえて「ヲン」を冠する必要はなさそうに思えます。
また kukerkep はどちらかと言えば東(メナシクル)の言い方で、西(シュムンクル)では nipes を使うことが多かったようにも見受けられます。
『東蝦夷日誌』(1863-1867) には次のように記されていました。
ヲニケシヘ(小川)榀皮 多き義。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編『新版 蝦夷日誌(上)』時事通信社 p.116 より引用)
nipes が「ニケシ」に転訛したとすれば、o-nipes-pet で「河口・シナノキの内皮・川」だったということになりますね。本来は nipes と -pet の間に -us や -o などの動詞が存在していたとすれば文法的にも違和感はありません。戊午日誌の「ヲニケレベ」からは o-nikur-pet で「河口・林・川」という可能性も考えたくなります。もっとも、これは「シ」ではなく「レ」が正であるという前提が必要になりますが、「ヲニケシヘ」も nipes が「ニケシ」に転訛したという前提が必要になるので、実はどっちもどっちのような気も……。
ショロマ川
so-oro-oma?
滝・のところ・そこにある
滝・のところ・そこにある
(? = 旧地図等に記載あるが位置に疑問あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「オニキシベ川」の北東で、北から厚真川に合流する支流です(国土数値情報では「ショロマ沢川」)。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「シヨウロマ」という川が描かれていますが、これは現在の「ショロマ川」とはやや位置が異なるようにも思えます。
『北海道実測切図』(1895 頃) には「シヨルマ」とあり、これは現在の「ショロマ川」と同じ位置に見えます。
戊午日誌 (1859-1863) 「安都摩日誌」には次のように記されていました。
扨此処の向岸と思ふ辺りに
シヨウロマ
西岸川巾五六間、急流峨々たる山の間より落来るとかや。是滝川に成るより号るとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中』北海道出版企画センター p.478 より引用)
「シヨウロマ」あるいは「ショロマ」を素直に解釈すると so-oro-oma で「滝・のところ・そこにある」と言ったところでしょうか。なお今回は戊午日誌の記載もあるので so を「滝」としましたが、so の意味するところは日本語の「滝」よりも遥かに広範で、岩の上を水が流れているだけでも so だとされます。そのため「実際には滝は存在しない」という指摘は意味をなしません(今回の場合は「ショロマ川」と「シヨウロマ」の位置が同一であるかどうかも怪しいですが)。
また頭註には「so 滝」「rum 頭」「oma ある?」とあり、その横に「soroma 山鳥ぜんまい」と記されています。知里さんの植物編 (1976) にも sorma で「ゼンマイの葉」とあり、また「クサソテツ コゴミ」を意味するともあります。偶然の空似だと思いますが、参考までに。
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