2018年12月8日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (586) 「濁川・エダマサクルー川・矢口川・原子川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

濁川(にごりかわ)

o-nupki-o-p
河口・濁り水・ある・もの(川)
(典拠あり、類型あり)
「道の駅 香りの里たきのうえ」の東側一帯の地名です。かつて国鉄渚滑線にも同名の駅がありました。ということで……

  濁 川(にごりかわ)
所在地 (北見国) 紋別郡滝上町
開 駅 大正 13 年 10 月 21 日
起 源 アイヌ語の「オ・ヌㇷ゚キ・オ・プ」(川口に濁り水のある所)の意訳である。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.202 より引用)
どうやら「濁川」は o-nupki-o-p で「河口・濁り水・ある・もの(川)」と考えて良さそうです。

ちなみに、知里さんの「──小辞典」によると、nupkikike(油)から来ているのではないかとのこと。ke は「油」を意味するらしく、「天塩」「樺太」「北千島」で見られる語彙なのだそうです。なるほど、道理であまり聞かないわけですね。

エダマサクルー川

e-tampa-{sak-ru}??
頭(水源)・こちら岸・{夏・路}
e-saman-{sak-ru}??
頭(水源)・横になる・{夏・路}
(?? = 典拠なし、類型あり)
サクルー川は渚滑川の北支流で、滝上町の中心部で渚滑川と合流しています。サクルー川沿いには「札久留」という字が当てられているものが多くあります(北札久留、南札久留、上札久留など)。サクルー川の上流部は渓谷の中ですが、中流部から下流部にかけては支流によって形成された扇状地状の土地が広がっています。

エダマサクルー川はサクルー川の北支流です。エダマサクルー川を遡ると途中で右に大きく曲がっていて、水源はウェンシリ岳の南に位置しています。分水嶺を越えると下川町の「下の沢川」あるは「ポロナイポロ川」あたりに出ることになります。

「エダマ」の意味するところが不明ですが、e-tampa-{sak-ru} で「頭(水源)・こちら岸・{夏・路}」と考えることはできないでしょうか。エダマサクルー川がサクルー川と合流するのは(サクルー川の)北岸で、エダマサクルー川の水源も北側にある……ということからの推察です。残念ながら傍証は皆無ですが、このように考えることはできないかな……ということで。

(2018/12/9 追記)もっと単純に e-saman-{sak-ru} で「頭(水源)・横になる・{夏・路}」と考えられるかもしれません。

矢口川(やぐち──?)

ya-kus-i??
内陸・通る・もの(川)
yak-us-i???
崩壊する・いつもする・もの(川)
(?? = 典拠なし、類型あり)(??? = 典拠なし、類型未確認)
サクルー川を遡ると、奥札久留のあたりで「矢口川」が西から合流しています。傍証が不明どころか、そもそもアイヌ語に由来するのかどうかすら不明ですが、仮にアイヌ語の音から来た川名だったとしたら、ya-kus-i で「内陸・通る・もの(川)」だった可能性があるかな……と。

ただ、ya が出てくる必然性が若干不明なので、あるいは yak-us-i で「崩壊する・いつもする・もの(川)」と読み解けるかもしれません。もっとも yak が地名で出てくることは珍しい(これまで記憶に無い)ため、この解釈もあまり自信は持てなかったりしますが……。

原子川(読み不明)

para-kot???
広い・谷
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
これまたアイヌ語に由来するかどうか不明ですが、仮にアイヌ語に由来するのであれば、地形の特徴からは para-kot で「広い・谷」ではないかな、と思わせます。

現時点での正確な読みは不明ですが、漢字の読みは「一般的な読み方」に収斂していくものですので(「朱円」が「シュマトカリ」から「シュエン」になった例が有名ですね)、実はあまり気にしていません(ぉ)。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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