2026年4月24日金曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1373) 「ンタンシケオマナイ川・オノマップ川・タイウンナイ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ンタンシケオマナイ川

pitan-noske-oma-nay?
川原・真ん中・そこにある・川
(? = 旧地図等に記載あるが位置に疑問あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
国道 237 号の「額平橋」の北西で沙流川に合流する支流です。なんと「ン」で始まるという、しりとりの際に問題になりそうな川名ですね(川名は国土数値情報による)。

案の定と言うべきか、『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「タンシケヲマナイ」と描かれていました。


北海道実測切図』(1895 頃) には「ピタンノシケオマナイ」と描かれています(位置が少しおかしいようにも見えますが)。段々と正解?に近づいてきた感がありますね。


戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

また五六丁上りて
     ヒタンノシケヲマナイ
西岸崩岸に有。其名義は川原の中に有小川と云儀。ヒは小石にして、ノシケは中に、ヲマは在る也。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.49 より引用)
お? と思わせる内容ですが、頭註には次のようにありました。

ピタラ→ピタン
河原
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.49 より引用)
ああ、やはり。pitar-noske-oma-nay で「川原・真ん中・そこにある・川」ですが、「r は,n の前に来れば,それに引かれて n になる」ので pitan-noske-oma-nay になる、ということですね(知里真志保アイヌ語入門』(1956) p.169)。

オノマップ川

an-not-sep??
もう一つの・岬・広くある
(?? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「ンタンシケオマナイ川」の北東で、北西から沙流川に合流する支流です。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい名前の川が見当たらないように思われますが、『北海道実測切図』(1895 頃) に「アノセㇷ゚」とあるのが現在の「オノマップ川」のことでしょうか。何故か「アノセㇷ゚」は二つ描かれているのですが……。


戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

また少し行
     アノセ
西岸山の間也。其処相応の河にして川口広く畳にても敷し如き処有。よつて号しとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.49, p.51 より引用)※ 原文ママ
さて、これはどう考えたものでしょうか。sep は「広い」あるいは「広くなる」と言った意味ですが、「アノ」がなんとも意味不明です。

少し考えてみたのですが、ar-not(音韻変化で an-not となる)で「もう一つの・岬」となりそうな気がします。となると an-not-sep で「もう一つの・岬・広くある」となる……かも?

不安があるとすれば、not-sep という組み合わせの類例が思い出せないというところです。not-sam であれば「岬の傍」となり、類例も豊富なのですが、sam あるいは sam-pesam-pet が「セ」あるいは「セㇷ゚」に化けるのも容易ではないと思われたので……。

タイウンナイ川

tay-un-nay
林・そこに入る・川
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「オノマップ川」の北東、「オサツナイ沢川」の南西隣を流れる川です。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「タユンナイ」という川が描かれていますが、何故か現在の「タイウンナイ川」とは異なり、沙流川の南東側の支流とされています。


北海道実測切図』(1895 頃) にはほぼ現在と同じ位置に「タイウンナイ」と描かれていました(『北海道実測切図』では沙流川が北西に蛇行しているように描かれていますが、後の陸軍図では蛇行が解消されていることがわかります)。


戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

またしばし過て
     タユシナイ
西岸山の間小川也。其名義椴の木多く有よりして号るとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.52 より引用)
「西岸」とあるので、『東西蝦夷山川地理取調図』が東岸に描いたのはミスだった可能性が高くなりましたね。tay-us-nay であれば「林・ついている・川」と読めそうです。

現在の川名「タイウンナイ」であれば tay-un-nay で「林・そこに入る・川」と読めそうでしょうか。us-un- は意味も似通っていて、しかもカタカナの字形もかなり似ているので、どっちが「正解」だったかは謎ですが……。

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