2026年1月2日金曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1328) 「チライコッペ川・ケライ左川・樺奴山・保井山」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

チライコッペ川

chiray-kor-pe
イトウ・持つ・もの(川)
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
道道 71 号「平取静内線」の「里平橋」のすぐ先で里平川に合流する北支流です。国土数値情報では「チライコッペ川」です。

北海道実測切図』(1895 頃) には「チライペッ」と描かれています。


東西蝦夷山川地理取調図』(1859) では「リヒラ」(=里平川)が不当に短く描かれているということもあってか、それらしい川が見当たりません。


戊午日誌 (1859-1863) 「安都辺都誌」には次のように記されていました。

 またしばし過て
      チラヱコツペ
 左りの方小川。此川春いとう多く入るが故に号しもの也。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.113 より引用)
どうやら chiray-kor-pe で「イトウ・持つ・もの(川)」と見て良さそうな感じですね。ごく単純な解ですが以前の記事ではミスっていたような気がするのでリライトしました(汗)。

ケライ左川

{chiray-kor-pe}?
{チライコッペ川}
(? = 旧地図等で未確認、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
道道 71 号「平取静内線」の「里平橋」の西隣で「厚別川」に合流する北支流です。「全国Q地図」の「2018年度 全国橋梁マップ」によると「ケライ橋」が存在するとのこと。『北海道実測切図』(1895 頃) にはそれらしい川が見当たりません。


そもそも「ケライ左川」という川名は「国土数値情報」で確認できるのみで、国会図書館の蔵書を軽く検索した限りでは「ライ左川」という記録がヒットしました(「ケライ左川」ではヒットしない)。ただ「ケライ橋」という名前は公式なもののようで、ググると道庁の「固定資産台帳」がヒットします(汗)。

「ケライ左川」こと「ライ左川」は「チライコッペ川」の左側(西隣)に位置することに由来するネーミングなのでしょうね。「チ」を「ケ」に誤読、あるいは誤記したのだと思われますが、なんと罪作りなことを……。

樺奴山(かばんぬやま)

{kanba}-us-not??
{樺の木}・多くある・岬
(?? = 旧地図等に記載あるが位置に疑問あり、既存説、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
チライコッペ川の東、里平川の北に「樺奴山」という三等三角点があります(標高 314.5 m)。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) や『北海道実測切図』(1895 頃) にはそれらしい川が見当たりませんが、戊午日誌 (1859-1863) 「安都辺都誌」には次のように記されていました。

 またしばし過て
      カンバヘツ
 左りの方小川。此処樺多く有るよりして号しものなり。また上りて
      カンハウシヌウ
 左りの方小山也。此辺流屈曲して有る故、其処岬に成り、其岬の上に樺多きよりして号る也。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.113 より引用)
「小山也」って人名っぽいどうやら「カンハウシヌウ」が「樺奴山」っぽいですね。「岬の上に樺が多い」とのことですが、「樺の木」は tat-ni と呼ばれることが多いので、ちょっと謎ですね。

知里さんの『植物編』(1976) で「カバノキ科」とされる「ケヤマハンノキ」「ヤチハンノキ」「ミヤマハンノキ」「エゾノダケカンバ」「ウダイカンバ サイハダカンバ」「シラカンバ」「サワシバ」「アサダ」の項目を一通り眺めてみましたが、「カンバ」に近い語があったかと言われると……微妙なところですね。

たとえば「シラカンバ」の項には kapattatkapattat-ni とあるのですが、これが「カンバ」あるいは「カンハ」だと言えるかは……むしろ「シラカンバ」の「カンバ」のほうが近いですよね。となると「カンバヘツ」は和語とアイヌ語の折衷地名なのか、という話に……?

松浦武四郎がインフォーマントに一杯食わされた可能性も考えてみましたが、他に有力な解も考えられず……。辞書類から適当にそれっぽい解をひねり出せなくも無いのですが、それらしい蓋然性を持ち合わせた解は出せそうにありません。

「カンハウシヌウ」は {kanba}-us-not で「{樺の木}・多くある・岬」と見るしか無いかな……というのが正直なところです。

保井山(ほいやま)

hoynu-us-i
てん・多くいる・ところ(川)
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
里平川の上流部、ウエンテシカン川の東に「保井山」という三等三角点が存在します(標高 719.2 m)。一見和名っぽいですが、「ほい──」という読み方はやや不自然なので……。

北海道実測切図』(1895 頃) にはそれらしい地名・山名は見当たりませんが……


戊午日誌 (1859-1863) 「安都辺都誌」には「ウエンテシカニ」の支流として、次のように記されていました。

  またしばし上りて
       ホイヌシ
  右のかた小川。其名義は貂多く居ると云よりして号しとかや。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.114 より引用)
「ウエンテシカニ」は「リイヒラ」の支流なので、厚別川から見ると「支流の支流」という扱いです。そのため二字下げになっています。

「ホイヌシ」は hoynu-us-i で「てん・多くいる・ところ(川)」と見て良さそうですね。『北海道実測切図』に見当たらないレベルのマイナーな川名が三角点の名前としてひっそりと生き延びているというのは、なかなか胸熱な感じが……!

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