(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
右左府(うさっぷ)
o-sapa?
河口・頭(岬)
河口・頭(岬)
(? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
旧・門別町と合併する前の旧・日高町は、1943 年までは「右左府村」という名前でした。「右左府」という地名は姿を消しましたが、道道 847 号「三岩日高線」の「右左府橋」があるほか、「ホロカワウシャップ川」を遡った先の占冠村との境界付近に「右左府」という名前の二等三角点が存在しています(標高 932.2 m)。地名としての「右左府」は過去のものになりつつありますが、川名としては中心街の西に「パンケウシャップ川」とその支流の「ホロカワウシャップ川」が、そして中心街の東に「ペンケウシャップ川」が健在です。
『北海道実測切図』(1895 頃) にも「パンケウシヤㇷ゚」と「ペンケウシヤㇷ゚」が描かれていて、両者の間に漢字で「右左府」と描かれています。「右左府」という漢字表記は、『角川日本地名大辞典』(1987) によると「明治40年浦河支庁長西忠義が,左右に道が通じるという意味で決定したという」とありますが、『北海道実測切図』に既に「右左府」とあるので、それ以前から使用されていたことになりますね。
なお『改正北海道全図』(1887) には「宇佐津富」とあるほか、「宇社布」という表記もあったとのこと。この「右左府」は、後に国道 274 号「石勝樹海ロード」が開通することで道東と道央を結ぶ交通の要衝になるのですが、それを見越したようなネーミングだったというのは(偶然とは言え)面白いですね。
『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が描かれていないのですが、戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。
またしばし過て
ウ ツ フ
左りの方小川。椴の木多し。此処までイワチシより凡また雪路一日に来るとかや。其名義は本名フツホコマナイのよし也。椴多きと云儀。また少し上りて
ハンケウサフ
ヘンケウサフ
左りの方小川。其名義未だ解せず。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.72 より引用)
永田地名解 (1891) にはそれらしい記述が見当たりません。山田秀三さんの旧著『北海道の川の名』(1971) には次のように記されていました。
北海道行政区画便覧に、「両方に出入口のある所」と書いてある。誰かの判読であろうが、少々無理な解に見える。
(山田秀三『北海道の川の名』モレウ・ライブラリー p.146 より引用)
これは「ウシャップ」ではなく「右左府」の由来を記したようにも取れそうな……?萱野茂さんは、二つの川が、「互に並んで下っている」からこの名がついたのか、と意見を述べられた。ウ・サㇷ゚「U-sap 互に・下る(複数形、単数は san)」、と読まれたもの。
(山田秀三『北海道の川の名』モレウ・ライブラリー p.146 より引用)
u-sap で「互いに・山から浜へ出る」ではないか、ということですね。現在はこの解釈が広く受け入れられているようですが、他所で類例を見ないという点が引っかかっています。ついでに言えば、地名は特定の場所、あるいは山や川を意味するポインターとして機能するもので、特にアイヌの地名は直球(ストレートなネーミング)が多いことで知られます(例えば poro-nay で「大きな・川」とか)。
もちろん「互いに並んで下っている」というのもアリだと思いますが、「あー、あの川ね」と万人が納得するネーミングなのだろうか、と疑問に思ったりもします。
では「ウシャップ」とは何なのか……ですが、やはり地形的な特徴を指していると考えたくなります。国道 237 号と国道 274 号が交叉する十字路の北に「日高神社」がありますが、その後背にちょこんとした山があるように見えます。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
あとは「ペンケウシャップ川」沿いにも似たような山があれば良いのですが、ある……と言えばあるような気も。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「頭」や「岬」を意味する sapa という語があるので、o-sapa で「河口・頭(岬)」だったのではないか……と考えてみました。地名としては不完全な形なので、本来は o-sapa-us-i で「河口・頭(岬)・ついている・もの」あたりで、o-sap-us-i と転訛した後に -us-i が落ちたとすれば「ウシャップ」に近い形になるんじゃないかな……と。ホロカワウシャップ川
horka-{o-sapa}?
U ターンする・{右左府}
U ターンする・{右左府}
(? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「パンケウシャップ川」は国道 237 号の西を北から南に向かって流れていますが、国道 274 号の「日夕橋」の近くで西から「ホロカワウシャップ川」が合流しています。普通に考えると horka-{o-sapa} で「ホロカウシャップ」となりそうなものですが、現在の川名は「ホロカ
wa は、『地名アイヌ語小辞典』(1956) によると次の意味があるとのこと。
wa ワ《助》①から; より。(=orowa) ②【H 北】に。(=ta)sa ~ an nupuri 「前 に ある 山」
(知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター p.142 より引用)
となると horka-wa-{o-sapa} だったのか……と考えたくなるのですが、どうやら wa は名詞の後ろに置かれるようなので、少なくとも名詞とは言えない horka の後ろに置かれるのはあり得ないようにも思えます。「ホロカ
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