2026年8月7日金曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1418) 「ソソシ沢川・サヌシュベ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ソソシ沢川

so-so-us-i?
滝・滝・ついている・もの(川)
(? = 旧地図等に記載あり、既存説に疑問あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
むかわ町穂別稲里、国道 274 号の「佐主橋」から道道 74 号「穂別鵡川線」を 1.6 km ほど南に進んだところで西から穂別川に合流する支流です。

北海道実測切図』(1895 頃) には「ソーサヌシュペ」と描かれている川が現在の「ソソシ沢川」のことでしょうか。北隣の国道 274 号沿いを「サヌシュペ」が流れているので、その派生形……ということでしょうか?


ところが戊午日誌 (1859-1863) 「武加和日誌」には次のように記されていました。

 また少し上り
      シヨシヨセ
 左りの方小川。其名義は川口に滝有るによつて号るとかや。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中』北海道出版企画センター p.582 より引用)※ 原文ママ
戊午日誌の記録と『北海道実測切図』の川名の乖離が気になりますが、永田地名解 (1891) には次のように記されていました。

Sō sanush pe   ソー サヌシュ ペ   瀑下ル川
永田方正北海道蝦夷語地名解』国書刊行会 p.212 より引用)
どうやら「実測切図」は永田地名解に汚染されたの影響を受けたようですね。現在の「ソソシ沢川」という川名は、松浦武四郎が記録した「シヨシヨセ」に由来すると考えたいところです。

松浦武四郎は「シヨシヨセ」を「川口に滝がある」としましたが、これは so-so-us-i で「滝・滝・ついている・もの(川)」と見るべきでしょうか。滝の多い川だった、ということになろうかと思われます。

それはそうと、永田方正が「ソーサヌシュペ」としたのは……何故なんでしょう……?

サヌシュベ川

san-us-pe?
出崎・ついている・もの(川)
(? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
むかわ町穂別稲里、国道 274 号の「佐主橋」からそれほど遠くないところで西から穂別川に合流する支流です。『北海道実測切図』(1895 頃) には「サヌシュペ」と描かれているように見えます。


不思議なことに戊午日誌 (1859-1863) 「武加和日誌」にはそれらしい川が見当たらない……かと思ったのですが、ちゃんと記述があったのを見落としていました(汗)。

 また少し上り
      フサウシ
 左りの方相応の川のよし。其名義は雨が降るに第一番に水嵩増す故に号しものとかや。本名はサヌシと云よし也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中』北海道出版企画センター p.582-583 より引用)
東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にも「サヌシヘ」と描かれているので、どこから「フサウシ」が出てきたのかは謎ですが、『午手控』(1858) には「ヌサウシ」とあるので、「フ」は「ヌ」の誤記あるいは誤読だった可能性がありそうですね。


永田地名解 (1891) には次のように記されていました。

Sanushpe,san ush pe   サヌシュ ペ   低キ川 宗谷ニ「サンナイ」アリ同義
(永田方正『北海道蝦夷語地名解』国書刊行会 p.212 より引用)
「サヌシュペ」が san-us-pe じゃないか……という点は同意しますが、その解釈については検討の余地がありそうに思えます。永田方正が san を「低い」としたのは少々謎ですが、san は「降りる」「くだる」「さがる」を意味する ran の同義語として使われるケースもあったようなので、そう理解すれば良さそうでしょうか。

一方で、松浦武四郎は「雨が降ると真っ先に水かさが増すので」としていますが、これは san-us-pe を「山から浜へ出る・いつもする・もの(川)」と解釈したものでしょうか。

地名における san の解釈

地名における san の解釈はちょっと注意が必要で、「山から浜へ出る」という完動詞とは別に、「坂」「出崎」「棚」「棚のような平山」を意味する名詞としての用法があります。これまで見てきた限りでは、むしろ名詞的用法のほうが多い印象もあります。

よって san-us-pe は「棚のような平山・ついている・もの(川)」と見ることもできるのですが、地形図を眺めた限りではそのような山があるようにも見えます。

ただ……あ。san-us-pe を「出崎・ついている・もの(川)」と解釈できることに気づいてしまいました。ご都合主義かもしれませんが、国道 274 号の「佐主橋」のすぐ北側に、なかなか顕著な「出崎」があるではありませんか……。

「サヌシュベ川」は、穂別川の支流としてはおそらくもっとも大きなもので、上流に多くの支流を抱える川です。そのため雨が降った後は素早く増水すると思われるので、そこから松浦武四郎が記録したような解釈が生まれたのではないか……と思わせます。ただ元々の意味は「出崎の傍を流れる川」だったのではないでしょうか。

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