2026年8月9日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1420) 「野多峰橋・ヌタポマナイ川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

野多峰橋(のたっぷはし)

nutap
川の湾曲内の土地
(?? = 旧地図等で未確認、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
穂別ダムの東を「町道穂別夕張線」が通っていて、「野多峰橋」で穂別ダムをショートカットしています。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川名が確認できず、『北海道実測切図』(1895 頃) にはそれらしい川が描かれているものの川名の記入はありません。


戊午日誌 (1859-1863) 「武加和日誌」には「ヌタホマナイ」という川の存在が記されていますが、これは穂別ダムの北、道東道のむかわ穂別 IC の西で穂別川に合流する「ヌタポマナイ川」のことで、「野多峰橋」とは直線距離で 3 km ほど離れています。

まずは『地名アイヌ語小辞典』(1956) で nutap の意味を確かめてみましょう。

nutap, -i ヌたㇷ゚ ①川の彎曲内の土地。 ②【ナヨロ】山下の川ぞいの平地。③【サマニ】川ぞいの岩崖の上の平地。kim-un-~山奥の峰の上の岩原。
知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター p.70 より引用)
いくつかの解釈が成り立つようですが、やはり一般的には①が多いように感じられます。穂別ダムができる前の地形を確認しようと陸軍図を眺めてみたところ……。


おおお、現在の「穂別大橋」の下に巨大な nutap があったのですね。nutap はあくまで「川の湾曲内の土地」なので、川名として記録されることはありません。そのため戊午日誌にも出てこなかったものだと思われます。

「野多峰橋」のあたりが「ノタップ」と呼ばれたという直接的な証拠はありませんが、状況証拠はバッチリと言った感じでしょうか。

ヌタポマナイ川

nutap-oma-nay
川の湾曲内の土地・そこにある・川
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
道東道のむかわ穂別 IC の西で穂別川に合流する支流です。『北海道実測切図』(1895 頃) には「ヌタポマイ」という名前の川が描かれていました。


戊午日誌 (1859-1863) 「武加和日誌」には次のように記されていました。

 また少し上りて
      ヌタホマナイ
 左りの方相応の川也。此処にて凡二股に成る。其名義此処平地のたに成り居るよりして号也。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中』北海道出版企画センター p.584-585 より引用)
「のた」とあるのは nutap のことで、意味は「川の湾曲内の土地」と見ていいかと思われます。こちらも陸軍図を見ると、(前述の)穂別ダムのあたりの nutap よりは規模が小さいものの、「川の湾曲内の土地」に「ヌタポマイ澤」が合流していることがわかります。


nutap-oma-nay で「川の湾曲内の土地・そこにある・川」とみていいかと思われます。厳密には「川の湾曲内の土地」の「外」に合流するのですが……。

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