2026年6月19日金曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1397) 「パンケヌーシ川・ユクフシュツベ沢川・ユクルペユツベ沢川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

パンケヌーシ川

panke-nu-us-i
川下側の・豊漁・多くある・もの(川)
(旧地図等に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
千呂露川」から 4.5 km ほど東で、南から沙流川に合流する支流です。国道 274 号は「占瀬橋うらせばし」でパンケヌーシ川(国土数値情報では「パンケヌシ川」)を横断しています。

東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「ハンケヌシ」と描かれています。


北海道実測切図』(1895 頃) には「パンケヌーウシ」と描かれていました。


このあたりの松浦武四郎の記録は「聞き書き」(=実際に足を運んでいない)の筈なので漏れも多いのですが、「ハンケヌシ」と「ヘンケヌシ」(=ペンケヌーシ川)についてはしっかりと記録しています。きっとそれだけ大きな川だったということで、確かに長さや流域面積は千呂露川にも負けず劣らずと言った風に見えます。

戊午日誌 (1859-1863) 「左留日誌」には次のように記されていました。

またしばし過て
     ハンケヌシ
     ベンケヌシ
右の方小川。其名義は不解。またこの川筋小沢多きよしなれども、其名はしれず。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下』北海道出版企画センター p.74 より引用)
おや……意外なことに「その名義は解せず」とあります。

ただ永田地名解 (1891) には次のように記されていました。

Panke nū ushi   パンケ ヌー ウシ   下ノ漁獲多キ處
Penke nū ushi   ペンケ ヌー ウシ   上ノ漁獲多キ處
永田方正北海道蝦夷語地名解』国書刊行会 p.233 より引用)
nu は「豊漁」を意味するので、panke-nu-us-i で「川下側の・豊漁・多くある・もの(川)」ということになりますね。この解は文法的にも違和感のないもので、現在では広く受け入れられているように思われます。

敢えて難癖をつけるならば、松浦武四郎のインフォーマント(シユツカトク、あるいは脇乙名シユクンナ?)が「意味は知らない」としたところでしょうか。実際にここまで見てきた感じでは、殆どの地名がなんだかんだと音が訛った形で伝わっているように思えるので、この川だけ「きれいに」伝わっているというのも、ちょっとだけ奇妙な感じがします。

ということで、もし「豊漁である川」では無かったのだとすると panke-ni-us-i で「川下側・木・多くある・もの(川)」あたりでしょうか。まぁ、あくまで「豊漁である川」であることを否定せざるを得なくなった場合は……という限定つきですが(現時点ではその可能性は非常に低いです)。

ユクフシュツベ沢川

yuk-ru-pes-pe??
シカ・路・それに沿って下る・もの(川)
(?? = 旧地図等で未確認、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「パンケヌーシ川」の 2.5 km ほど上流側を「ペンケヌーシ川」が流れているのですが、その「ペンケヌーシ川」の河口から沙流川を更に 1 km ほど遡ったところで西から合流している支流……とされています(地理院地図には川として描かれておらず、川名は国土数値情報による)。

『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が見当たりませんが、『北海道実測切図』(1895 頃) では……ちょっと妙なことになっていました。「ユオッチミ」という川と「ユㇰルペㇱュペ」という川が描かれているのですが、「ユオッチミ」は「ペンケヌーウシ」(=ペンケヌーシ川)よりも下流側で沙流川に合流しているので、現在の「ユクフシュツベ沢川」ではないと見られます。


沙流川に合流する位置で考えると、「実測切図」の「ユㇰルペㇱュペ」が近いのですが、これは「清瀬橋」の近くで沙流川に合流する「ユクルペユツベ沢川」であると見るべきでしょう。

つまるところ「ユクフシュツベ沢川」なる川は「実測切図」には見当たらない……と考えるしか無さそうですが、「ユクフシュツベ」は「ユㇰルペㇱュペ」と似ているので、北隣の川の名前と取り違えた上に誤記誤読を繰り返した……ということになるでしょうか。

yuk-ru-pes-pe は「シカ・路・それに沿って下る・もの(川)」なので、川沿いにシカの通り道があったということになりますが、そもそもが北隣の川の名前なので……。

ユクルペユツベ沢川

yuk-ru-pes-pe
シカ・路・それに沿って下る・もの(川)
(? = 旧地図等に記載あり、独自説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
国道 274 号の「清瀬橋」の近くで北西から沙流川に合流する支流……ですが、『北海道実測切図』(1895 頃) では「ユㇰルペㇱュペ」の *北隣* に不当に短く描かれています。理由は不明ですが、作図の際にミスがあった……のでしょうね。


おそらくこの川が本来の「ユㇰルペㇱュペ」だったと思われます。yuk-ru-pes-pe で「シカ・路・それに沿って下る・もの(川)」ですが、よく見ると「ユクルペベ」は「ルペペ」の「ㇱ」と「ュ」が入れ替わっている上に「ㇱ」を「ツ」に誤読(誤記?)していて、色々と味わい深いですね……(汗)。

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